第7章|見落とされがちな「キャッシュフロー」
✅ 導入|「黒字なのに潰れた」その理由、説明できますか?
企業の倒産理由で、最も多いのがこれです。
「利益は出ていたのに、資金が尽きてしまった」
一見すると不思議に思えるかもしれません。
売上も利益も出ている。決算書上は「黒字」。
──それでも、現金が足りなければ企業は倒れるのです。
これは個人の家計でも同じ。
毎月の収支が黒字でも、「手元に現金がない」状態では生活が回りません。
📌 投資家として企業を見るとき、
「利益」よりも「現金の流れ=キャッシュフロー」こそが、真の安定性を測る指標になります。
7-1|キャッシュフローとは?利益と現金の違いを図解で理解する
💰 利益とキャッシュフローは、まったくの別物
まず知っておきたいのは、
「利益があるからといって現金があるとは限らない」という事実です。
📊 利益(PL)とは…
- 商品やサービスを売って得られた金額(売上)から
- 費用(仕入・人件費など)を差し引いた
→ 会計上の“計算上の利益”です
ですが、これは現金の増減とは一致しません。
💸 キャッシュフロー(CF)とは…
- 実際に会社の口座から出ていったお金・入ってきたお金の流れ
→ 「現金ベース」の動きです
たとえば、売上が立っても代金の入金が半年後なら、今のキャッシュフローはゼロ。
逆に、設備投資をした時点で現金は大きく減りますが、利益には影響しない場合もあります。
✅ キャッシュフローを見るべき理由
観点 | 利益 | キャッシュフロー |
---|---|---|
会計処理 | 発生主義(請求・仕訳ベース) | 現金主義(実際の入出金) |
実態把握 | ズレがある可能性 | 現金の有無が明確 |
投資判断 | 利益だけでは倒産リスクを見逃す | 手元資金の余裕が確認できる |
📌 投資家目線では、「どれだけ現金が残っているか」を知ることが、
企業の持続可能性・余力・危機回避能力を測るうえで重要なのです。
🧠「PL(損益計算書)+CF(キャッシュフロー計算書)」が必須セット
多くの個人投資家は、PERやROEなど利益関連の指標だけを見がちです。
でもそれだけでは**“資金ショートの兆候”を見逃す**可能性があります。
だからこそ、キャッシュフロー計算書の存在を軽視してはいけません。
7-2|キャッシュフロー計算書の3区分を読み解く(営業・投資・財務)
💡 キャッシュフローを見るには「3つの流れ」を分けて考える
キャッシュフロー計算書(C/F)は、
以下の3つの区分に分かれて構成されています:
- 営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)
- 投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)
- 財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)
それぞれ、企業のお金の使い方・稼ぎ方・借り方を映し出しています。
▶ 営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)
✅ 本業でお金を稼げているか?を見る最重要項目
営業CFは、企業の本業から得られた現金の流れを示します。
たとえば:
- 商品を売って現金を受け取る
- 仕入や人件費を現金で支払う
- 売掛金や在庫の増減が反映される
📌 チェックポイント
状態 | 評価 | 理由 |
---|---|---|
プラス | 高評価 | 本業でキャッシュが生まれている状態 |
マイナス | 注意 | 売上はあるが、現金が減っている可能性あり |
👉 営業CFがプラス=事業モデルが強いと考えられます。
▶ 投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)
✅ 将来の成長のために“どんなお金の使い方”をしているか?
投資CFは、企業の成長投資・設備投資・M&Aなどの動きを表します。
- 工場や店舗の新設
- 設備の購入・ソフトウェア導入
- 他社の買収
📌 チェックポイント
状態 | 評価 | 理由 |
---|---|---|
マイナス | 通常 | 投資=将来のための支出。健全 |
プラス | 要注意 | 投資の縮小・資産売却などが主因の可能性もあり |
👉 単なる“マイナスだから悪い”は誤解。内容を見極める必要があります。
▶ 財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)
✅ 借金・資金調達・配当など“外部とのお金のやり取り”
財務CFは、借入・返済・増資・配当・自己株買いなどの資金の流れを指します。
たとえば:
- 銀行からの借入・社債の発行
- 借金の返済
- 株主への配当・自社株買い
📌 チェックポイント
状態 | 評価 | 理由 |
---|---|---|
プラス | 借入等で資金を得ている | 必要資金確保の証。過度な借入は注意 |
マイナス | 借金返済・配当実行中 | 健全化の一手。資金余裕の現れでもある |
👉 財務CFは、企業の資金戦略や株主還元姿勢を読み取る重要項目です。
🧠 3つのキャッシュフローで“企業の経済ストーリー”が見える
項目 | プラスが望ましいか? | 解釈のポイント |
---|---|---|
営業CF | Yes | 本業で儲かっているか |
投資CF | 通常はマイナスでOK | 成長戦略の有無と中身 |
財務CF | 状況次第 | 借入頼りか、自力経営かを判断する |
👉 この3つのバランスを見ることで、企業の「稼ぐ・使う・返す」の健全度がわかります。
7-3|「黒字倒産」はなぜ起きるのか?現金不足のリアルケース
😨「黒字なのに倒産」──そのメカニズム、知っていますか?
決算書では利益が出ていても、
企業があっさりと倒産してしまうケースは少なくありません。
このようなケースの多くに共通するのが、
「現金が回らなくなった」=キャッシュフローの崩壊です。
📉 利益≠資金繰り
「黒字=安心」と思いがちですが、企業経営の現場では、
- 入金は3ヶ月後
- 支払いは即日
- 給与・税金・家賃は毎月固定
こうした“資金のタイムラグ”があるため、
利益があっても手元に現金がなければ企業は立ち行かなくなるのです。
📌 実例:成長企業の“資金ショート”シナリオ
- 売上急増で業績は好調
- 新店舗・設備投資を続ける
- 商品の仕入・人件費など先行支出が膨らむ
- 入金は数ヶ月先
- 手元資金が枯渇
→ 支払い不能 → 倒産
これは「成長が早すぎる企業」が陥りやすい典型パターンです。
💡 “利益”より“現金”が企業の命綱
状態 | 表面上 | 実態 |
---|---|---|
利益が黒字 | 安定して見える | 現金がなければ倒産の危機 |
利益が赤字 | 不安に見える | キャッシュが潤沢なら持ちこたえられることも |
投資家にとって重要なのは、決算の一部だけを見て「安心」と錯覚しないことです。
✅ 投資で“黒字倒産企業”を避けるには?
以下のような企業には注意しましょう:
- 営業CFがマイナス
- 売上が急激に伸びている
- 借入金依存度が高く、財務CFがプラスに偏っている
- 現金及び現金同等物が減少傾向にある
👉 こうした兆候は、キャッシュフロー計算書と注記を見れば読み取れます。
🧠 「成長している会社こそ、倒れることがある」という視点を持とう
📌 見た目の成長や株価の高騰に惑わされず、
企業の“お金の流れ”を冷静に読むことが、投資家としてのリスク管理力につながります。
7-4|フリーキャッシュフローで見る企業の自立性
💡 フリーキャッシュフローとは?
フリーキャッシュフロー(Free Cash Flow=FCF)とは、企業が本業で得た現金から将来のための投資を差し引いた「自由に使えるお金」のことです。
FCF = 営業CF − 投資CF
この数値がプラスであればあるほど、企業は自力で資金を生み出し、自由に使える余裕があると評価できます。
✅ FCFが大きい企業=経営に“余裕”がある企業
- 設備投資してもお金が残る
- 借金に頼らず、自己資金で事業を回せる
- 配当や自社株買いも“無理なく”実施できる
つまり、フリーキャッシュフローは企業の「自立性」や「持続可能性」を映す鏡なのです。
📊 たとえば…
指標 | 企業A | 企業B |
---|---|---|
営業CF | +100億円 | +100億円 |
投資CF | −80億円 | −20億円 |
FCF | +20億円 | +80億円 |
両社ともに営業CFは同じですが、FCFで見ると企業Bの方が資金の余裕が大きいことが分かります。
📌 FCFが重要視される3つの理由
- 配当余力があるか?
→ FCFが赤字なのに無理して配当している企業は危険信号です。 - 借入依存の有無
→ FCFがマイナスの企業は、借入や増資に頼らざるを得ない傾向があります。 - “攻める力”があるか
→ FCFが大きい企業は、将来のM&Aや研究開発にも積極投資が可能です。
🧠 投資判断のためにFCFをチェックするクセを
- 営業CFは“稼ぐ力”
- 投資CFは“未来への仕込み”
- 財務CFは“資金のやりくり”
- フリーCFはその結果として残る“自由度”
📌 FCFが安定してプラスの企業は、「本業で稼ぎながら、未来にも投資できて、かつ余裕がある企業」と言えます。
✅ 第7章まとめ|利益より“現金”を見る投資家が生き残る
投資の世界でよくある誤解は、
「黒字なら安心」「利益が出ていればOK」
というものです。
ですが、現実には黒字倒産は珍しくありません。
企業の真の健全性は、「現金の流れ=キャッシュフロー」に現れます。
📌 投資判断で見るべき“キャッシュフローの3区分”
区分 | 意味 | チェックポイント |
---|---|---|
営業CF | 本業で稼いだ現金 | プラスか?継続性は? |
投資CF | 将来の成長のための支出 | 内容が成長的か消耗的か |
財務CF | 借入・配当などの外部資金 | 借金依存か、自立型か |
💡 フリーキャッシュフロー(FCF)=企業の“自由度”を見る指標
- 営業CF − 投資CFで算出
- 余った現金が多い=財務に余裕あり
- 自社で稼ぎ、未来に投資し、なおかつ還元できる企業が強い
📌 Quiet Money Labでは、
表面的な“利益”ではなく、内側の“キャッシュの動き”に注目することを推奨しています。
Quiet Money Labと静かに資産形成を始めてみませんか。
👉不動産クラウドファンディングって何?初心者向けに仕組みと始め方を解説 – Quiet Money Lab
👉「忙しい人に向いてる投資って?“考えない資産運用”の選択肢」 – Quiet Money Lab
👉「FXって危ないって本当?初心者がやっても大丈夫な方法はあるのか」 – Quiet Money Lab
📌 法令対応注釈(2025年時点)
- 本記事は2025年時点の制度・会計基準・商品設計に基づいています。将来的な変更の可能性があります。
- キャッシュフロー指標は過去のデータを基にしたものであり、将来の成果や倒産を完全に予測するものではありません。
- 投資には元本割れリスクがあり、判断は自己責任で行う必要があります。
- 本記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれており、リンク先経由の申込等により当サイトが報酬を得る場合があります。
コメント