第6章|企業の収益力を測る「ROE・ROA」
✅ 導入|「なんとなく良さそうな会社」から卒業しよう
「この会社、ニュースでよく見るし、有名だから安心」
「なんとなく株価が上がってるから買ってみようかな」
──もし、そんな理由で投資しているとしたら、
それは“勘”に頼った投資です。
確かに、投資を始めたばかりの頃は「なんとなく」で選んでしまいがちです。
しかし、資産を育てていく上ではいずれ必ずぶつかる壁があります。
✔「企業の“中身”を、数字で見極める力がない」
✔「利益が出てるのに、なぜか不安で保有を続けられない」
この壁を超えるカギが、
ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)という2つの数字です。
6-1|ROE・ROAとは?収益性の違いを示す2つの基本指標
💡 ROEとは?株主のお金を“どれだけ効率よく”使ったかを表す指標
ROE(自己資本利益率)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(%)
これは一言でいえば、
「株主が出したお金に対して、どれだけ利益を出したか」を示す指標です。
📌 たとえば…
- 自己資本100億円の会社が、純利益10億円を出した
→ ROEは10%
つまり、株主が出資した100億円に対して10億円のリターンを出していることになります。
株主視点では、「この会社は効率よく利益を出してくれている」と見なせます。
💡 ROAとは?会社全体として“どれだけ稼げているか”を見る指標
ROA(総資産利益率)= 当期純利益 ÷ 総資産 × 100(%)
こちらは「会社が持っているすべての資産を使って、どれくらい儲けているか」を示すものです。
📌 たとえば…
- 総資産500億円の会社が、純利益10億円を出した
→ ROAは2%
これは、「この会社は持っている資産全体から2%の利益を生み出している」ことを意味します。
✅ ROEとROAの違いをざっくり整理すると…
指標 | 見る視点 | 評価ポイント | 向いている用途 |
---|---|---|---|
ROE | 株主視点 | 自己資本の収益性 | 株式投資における効率性評価 |
ROA | 企業全体視点 | 資産の効率性 | 企業の経営体質・総合力評価 |
✅ どちらも“数字だけ”を見ると危険。でも、武器にすれば強い
- ROEが高い企業でも、実は借金で膨らんでいる可能性がある
- ROAが低くても、**業種的に資産が重いだけ(不動産・製造業など)**という場合もある
だからこそ、これらの指標は「組み合わせて使う」ことで真価を発揮します。
📌 Quiet Money Labでは、こうした「数字の意味を自分の言葉で理解し、判断軸を育てる」ことを大切にしています。
6-2|「ROEが高ければ良い会社」は本当か?
📈 一見優良企業に見える「高ROE」──実は落とし穴もある
「ROEが高い=収益力が高い=良い会社」
という公式を、よく見かけます。
確かに、株主が出資したお金に対して高いリターンを出している企業は魅力的です。
しかし──
ROEが高いからといって、無条件に“優良”とは言い切れないのです。
😮 なぜなら、ROEは“借金でも上げられる”から
ROEを構成するのは以下の式です:
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本
この分母(自己資本)が少なければ、ROEは高くなります。
つまり、自己資本が小さく、他人資本(=借金)を増やすことで“見かけ上”ROEが高くなるのです。
📌 たとえば…
- 自己資本10億円・純利益1億円 → ROE 10%
- 自己資本5億円・純利益1億円 → ROE 20%
利益は同じなのに、自己資本が少ない方が「効率よく稼いでるように見える」。
しかしその実態は、財務レバレッジ(借入)によるリスクを取っているだけかもしれません。
🧠 “ROEの高さ”は「質」で見極めるべき
数字の裏側にあるリスクを見るためには、以下のようなポイントに注目しましょう。
✅ ROEの“質”を見抜く3つのチェックポイント
- 継続性:過去3〜5年間、ROEが安定して高い水準を維持しているか?
- 利益構造:一時的な特別利益(売却益・税制効果)でROEが跳ねていないか?
- 自己資本比率:ROEが高くても自己資本が少なすぎると、倒産リスクが高まる可能性あり
📊 ROEを見るときの“良い目安”とは?
状況 | ROEの水準(参考) | コメント |
---|---|---|
安定成長型企業 | 8〜12% | 継続性重視で好印象 |
高収益・競争力あり | 15%以上 | 事業モデルに注目すべき |
突出して高い(20%超) | 要注意 | 財務レバレッジや一時的要因を疑うこと |
📌 ROEは“表面の数字”よりも“中身の構造”を見ることが重要です。
6-3|ROAは「企業体質の良さ」を見抜くのに適している
💡ROAとは「企業の総合力」を見る指標
前章で触れたように、ROA(総資産利益率)は以下の式で表されます:
ROA=当期純利益 ÷ 総資産 × 100(%)
ROEが「株主目線の効率」なのに対して、
ROAは“会社全体の体質”を評価する指標です。
🏢 ROAは「どれだけの資産を活かして利益を出せているか」を示す
企業には、工場・設備・在庫・現金などさまざまな資産があります。
これらのリソースを使ってどれだけ利益を出せているかを見ることで、経営の効率性=企業体質が見えてくるのです。
📌 たとえば…
- A社:総資産1,000億円、純利益10億円 → ROA 1.0%
- B社:総資産300億円、純利益9億円 → ROA 3.0%
売上や利益の“金額”ではA社が上ですが、
資産の活用効率ではB社の方が優れているという評価になります。
✅ ROAが高い企業は「無駄のない経営」ができている
- 資産を大量に抱えていない(在庫回転が速い)
- 固定費が重すぎない(機動力が高い)
- 省資源・省コストで収益をあげるモデルになっている
こうした企業は、景気の波にも強く、安定的な利益を生み出しやすい体質を持っています。
🔍 ROEが高くても、ROAが低い企業には注意
以下のような構造はリスク信号です:
- 借入によって自己資本を減らし、ROEだけが高く見える
- 実際には資産全体に対する収益性が低く、中身は非効率
📌 このような企業は、経営の地力に課題を抱えていることが多いため、ROAでの裏取りが必須です。
🧠 業種によって“適正なROA”は異なる
業種 | 平均的なROA | 備考 |
---|---|---|
小売業・サービス業 | 5〜8% | 回転率が高く、資産が軽い |
製造業 | 3〜5% | 設備投資が必要な分ROAは控えめに |
銀行・金融業 | 0.5〜1.5% | 資産が巨額になりやすいためROAは低めが普通 |
📌 「単に数値が高ければ良い」のではなく、
業種特性を加味してROAを判断することがポイントです。
6-4|ROE・ROAの実例比較|どちらが“稼ぐ力”に優れているか
🔍「ROEが高いA社」と「ROAが高いB社」、本当に強いのはどっち?
投資初心者がよく抱く疑問の一つがこちら:
「ROEとROA、どっちを重視すべきなんだろう?」
ここでは実際に、異なるタイプの企業2社を想定して比較してみます。
🏢 ケース比較|A社 vs B社
指標 | A社(高ROE型) | B社(高ROA型) |
---|---|---|
ROE | 15% | 8% |
ROA | 4% | 6% |
自己資本比率 | 20% | 60% |
総資産 | 1,000億円 | 500億円 |
借入依存度 | 高め | 低め |
✅ A社の特徴|利益率は高いが、借入によって“かさ増し”されたROE
A社は「自己資本が薄く、借入でレバレッジを効かせたタイプ」。
短期的なリターンは大きい一方で、以下のような懸念もあります。
- 財務的な安定性が低い
- 景気後退時に資金繰りリスクが高まる
- ROEの高さが持続しない可能性
✅ B社の特徴|堅実経営+高効率の“地力型企業”
B社は、資産を効率的に回しながら高いROAを維持。
借金に依存せず、本業の実力で稼いでいる印象です。
- 経営の安定感が高い
- ROEも悪くなく、バランスが取れている
- 長期投資に向いた“安心感”のある収益体質
🧠 結局どちらが“投資対象”として魅力的か?
投資スタンス | 向いている企業タイプ |
---|---|
短期集中型 | A社(高ROE) |
長期安定型 | B社(高ROA) |
📌 Quiet Money Labでは、「静かに、長く資産を育てたい読者」を想定しているため、
B社タイプ=高ROAかつ安定ROE型を基本的に推奨としています。
💡 銘柄分析の補助ツールを活用しよう
「自分でROE・ROAを探すのが面倒…」という方は、
自動でスクリーニングしてくれる証券会社のツールを使うのが近道です。
👉 松井証券「投信工房」では、企業業績に基づく投信選びが可能
👉 FOLIO ROBO PROは財務体質も加味したAIロジックで設計
✅ 第6章まとめ|ROEとROAで“稼ぐ力の中身”が見えてくる
投資判断において、
「この企業は利益を出しているか?」という問いは表面的です。
本当に重要なのは──
- どれくらいの資産を使って
- どれくらいの利益を生み出しているか
- その効率が継続しているか
この3点を見極めることです。
📌 ROEとROA、それぞれの役割を理解しよう
指標 | 意味 | 向いている評価軸 |
---|---|---|
ROE | 自己資本に対する利益率 | 株主視点の収益性(効率) |
ROA | 総資産に対する利益率 | 企業全体の体質・経営効率 |
📌「ROEが高いから良い」ではなく、
“その数字の裏側にある財務構造や経営方針”まで考える習慣が、強い投資家を育てます。
🧠 Quiet Money Labの基本姿勢
- 一時的な数字に振り回されない
- 財務の“質”を見る目を育てる
- 自分に合ったリスク水準で“継続できる設計”を選ぶ
これは株式投資に限らず、投信やロボアド選びにも通じる視点です。
Quiet Money Labでは静かな資産形成を始める方を応援しています。
👉不動産クラウドファンディングって何?初心者向けに仕組みと始め方を解説 – Quiet Money Lab
👉「FXって危ないって本当?初心者がやっても大丈夫な方法はあるのか」 – Quiet Money Lab
👉静かに、でも着実に。NISA×積立投資信託で“資産の呼吸”を整える方法 – Quiet Money Lab
📌 注釈
- 本記事は2025年時点の情報に基づいて作成しています。制度や税制は将来的に変更される可能性があります。
- ROE・ROA等の財務指標は過去の決算データに基づくものであり、将来の成果や株価を保証するものではありません。
- 投資には元本割れリスクがあります。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。
- 本記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれており、リンク先経由の申込等で当サイトが報酬を得る場合があります。
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