【2025年最新版】保険はいらない?本当に必要な保障と選び方を徹底解説【初心者向け完全ガイド】

「保険って、本当に入らないといけないんでしょうか?」
ある日、30代の共働き夫婦からこんなご相談を受けました。

生命保険や医療保険に、毎年35万円以上支払っているそうです。でも、「もしものときの安心」は欲しい一方で、そのお金を投資に回したほうが将来的にはいいのでは…?と悩まれていました。

会計やライフプランのサポートをする立場として、私は数字をしっかり見ながら、こう聞き返しました。

「“怖さ”って、具体的にいくら必要か数字で説明できますか?」

保険と投資は、気持ちの面で正反対です。
めったに起きないけれど“起きたら困ること”に備えてお金を払う保険。
“将来もっと増やしたい”という思いで続ける投資。

どちらも大事ですが、毎月の生活費から使えるお金には限りがあります。だからこそ、「どちらをどれくらいにするか」は、感覚ではなく数字で考える必要があるんです。

この記事では、国の制度(公的保障)と民間の保険の違い、平均的な保険料が生む“もったいない損失”の大きさ、そして最近注目されている少額から始められる自動化投資の活用法まで、数字と仕組みの視点でわかりやすく解説していきます。

ちなみに私自身、20代のときに「なんとなく安心だから」という理由で終身保険に加入し、30代で“思ったよりお金が返ってこない”と気づいてショックを受けた経験があります。そんな苦い思いを、読者の皆さんには味わってほしくない――そう願ってこの文章を書いています。

まずは読み進めて、「自分はどこから見直せばいいのか」を見つけていただければと思います。

目次

第1章|「保険っていらない?」その理由と落とし穴

1-1|「保険はいらない」派が根拠にする2つの数字

SNSなどでよく見かける「保険は必要ない」という主張。その多くは、次の2つの統計に基づいています。

  • 日本の民間生命保険における年間の平均保険料は約35.3万円。つまり月にすると約2.9万円。
  • 40歳男性の1年間の死亡率はわずか0.102%(女性は0.059%)。つまりほとんどの人にとって、死亡リスクはかなり低い。

これを見ると、「めったに起こらないことに、月3万円も払うのは非効率じゃない?」という考え方にも納得がいきますよね。
実際、投資をしている人たちの中には、「その分のお金を年5%の利回りで30年投資に回せば、2,000万円くらいにはなる」というシミュレーションを元に、「だったら保険より投資でしょ」と言う人もいます。

1-2|「やっぱり必要」と考える人が重視する3つのポイント

でも、家計やリスク管理を専門に見ている立場からすると、「保険は不要」と簡単には言い切れません。理由は次の3つです。

✅「機会損失」はあくまで平均の話

たしかに、年間35万円の保険料は大きいですが、これはあくまで平均。月5万円以上保険料を払っている世帯もあれば、県民共済だけで月2,000円ほどの人もいます。
つまり、自分の家庭のお金の使い方を「平均」という言葉で決めてしまうのは、ちょっと危険なんです。

✅保険は“レバレッジ”で大きな金額をカバーできる

例えば、死亡保険に月数千円払っておけば、万が一のときに3,000万円という大きな金額が家族に支払われることもあります。これは、「保険料の何百倍もの金額を保障してくれる仕組み」だからです。
40歳で死亡率が0.1%しかなくても、実際に亡くなれば、平均600万円の年収が残り20年間もらえない=家計に1億2千万円の損失が出る計算になります。保険はその穴を“明日から”補ってくれる唯一の手段とも言えます。

✅「確率の問題」より「最悪のシナリオ」への備え

医療保険なんていらない、と思うかもしれません。でも、先進医療を受けることになったり、長期間働けなくなったりすると、高額療養費制度でもカバーしきれない出費や、収入ストップという事態が同時にやってくるかもしれません。
保険の世界では、**「確率は低くても、起きたら一発アウト」**というリスクがある場合、ヘッジ(対策)をかけるのが鉄則です。

1-3|保険料35万円を投資に回したらどうなる?

それでも、「保険をやめて投資に切り替えたらどれくらい増えるの?」という疑問は残りますよね。
たとえば、年3.5%(税引後)で運用した場合の資産成長を見てみましょう(30年間、保険料相当の35万円を毎年投資に回したと仮定)。

年数投資元本運用益合計定期保険との差額(目安)
10年350万円67万円417万円約2,580万円の不足
20年700万円279万円979万円約2,020万円の不足
30年1,050万円736万円1,786万円約1,210万円の不足

※定期保険3,000万円との比較で算出

注目すべきは、30年運用しても、万が一が起きた“翌日”に必要なお金(例:3,000万円)にはまだ届かないということ。
もちろん、何もなければ1,700万円以上が残るわけですが、保険の本質は「何かあったとき、即お金が必要になる場面」への備えです。

私が家計相談でまず確認するのは、この3ステップです。

  1. 緊急用の現金がどれだけあるか
  2. 将来の収入(人的資本)をどれだけお金に換算できるか
  3. どのタイミングで、どんなお金の支出が発生するのか(ライフイベント)

この3つを数字で整理するだけでも、保険と投資のバランスが自然に見えてきます。

1-4|“過剰な保険”かどうかをチェックするポイント

保険を見直すときは、次の項目に自分でチェックを入れてみてください。

  • 毎月の保険料が、手取り月収の15%を超えていないか?
  • 死亡保障の金額が、生活費×年数に見合っているか?
  • 「なんとなく不安だから」だけで加入していないか?
  • リスクが高いタイミングと保障期間が一致しているか?
  • 貯蓄や投資とのバランスを年1回以上見直しているか?

全部「はい」と言えるなら、今の保険は“ちょうどいい”可能性が高いです。
1つでも「いいえ」があるなら、保険と投資のバランスを見直す価値があるかもしれません。

1-5|保険料を“投資の資金”に回すという考え方

最後に、「保険料を減らして投資したい」と思っている方に向けて。
私からの提案はこうです。

「投資は、保険の“代わり”ではなく、“行き先”として考えましょう」

今では、少額から始められる投資が増えてきました。たとえば、

  • インデックス投資(世界中の株式に分散投資)
  • ロボアドバイザー(自動で運用してくれる仕組み)
  • 不動産クラウドファンディング(不動産に少額から出資できる)

どれも、1万円程度からスタートできて、自動で引き落とし・積立ができるのが特徴です。
これは、保険と同じく「毎月の習慣」になりやすいという意味で、家計のリズムにもなじみやすいんですね。

医療や死亡リスクの“最低限だけ保険で備え”、あとは自分で増やす。
それが、「静かに・じっくり」資産を増やしていく、一番現実的で再現性のある方法だと思っています。

第2章|公的な制度と民間保険のほんとうの役割 ――「どこまでカバーされて、何が足りないの?」

2-1|「保険がいらないかも?」と思う前に知っておきたい“制度のしくみ”

保険って、全部自分で準備しなきゃいけないと思っていませんか? 実は、日本の社会保障はしっかり作り込まれていて、もともと「公的な保険制度」で守られている部分がけっこうあるんです。

イメージとしては、3つの“階”でできた建物のような仕組み。

  • 1階:健康保険や高額療養費制度(医療費の自己負担を抑えてくれる)
  • 2階:遺族年金や傷病手当金(家族の生活や働けなくなったときの収入補填)
  • 3階:会社の福利厚生や民間の保険(足りない部分を自由に補う)

つまり、民間の保険って「すべてを守る」ためにあるというよりも、「公的な制度で足りない部分だけ補う」ためのものなんです。

でも、実際には「なんとなく不安だから」「みんな入ってるし…」と、つい保険を“盛りすぎる”ことが少なくありません。私も20代の頃、あれこれ特約をつけて医療保険に加入していました。でも後で高額療養費制度の存在を知って、「えっ、こんな制度あるの? 先に知りたかった…」と後悔したことがあります。

2-2|高額療養費制度って万能? 実はカバーしきれない“盲点”も

高額療養費制度は、1ヶ月の医療費が一定金額を超えたとき、超えた分をあとから戻してくれるありがたい制度です。

たとえば、年収370~770万円くらいの人であれば、自己負担の上限は月9万円前後が目安になります。

でもここで、よくある“誤解”があります。

「9万円で済むなら保険いらないかも」→実は、それ以外にもかかるお金があるんです。

たとえば…

  • 差額ベッド代や食事代 → 制度の対象外。個室に入ったりすると1日1万円以上することも。
  • 先進医療(最先端の治療法)全額自己負担
  • 家族の付き添い交通費や、働けない間の収入の穴 → 誰も補ってくれません。

実際のデータでは、入院時の自己負担は1日あたり平均で2万円以上。つまり、1か月(30日)入院すれば、約60万円以上が出ていく可能性があるんです。

先進医療の中には、1回の治療で300万円を超えるものもあります。もちろん発症する確率は低いけれど、もし当たったら家計には大きな衝撃になります。

2-3|家族の大黒柱に万が一があったら…遺族年金だけで足りる?

「夫が亡くなっても、遺族年金があるから何とかなる」…そう思っている方、多いかもしれません。

でも実際の金額を見てみると――

年間の金額遺族基礎年金遺族厚生年金合計
受取額(子ども2人)約131万円約37万円約168万円

つまり、月に約14万円程度です。
これって、首都圏で家賃を払ったらほとんど残らない金額。
「遺族年金があるから大丈夫」と安心するには、ちょっと心もとないですよね。

実際に相談を受けていても、「遺族年金って月いくらもらえるんですか?」という質問に正確に答えられる人は1割もいません。でも、知らないままにしておくと、いざというとき“家計の穴”が大きくあいてしまうんです。

2-4|「みんな保険入ってるから安心」ってほんと?

最近の保険市場を見ると、加入件数はどんどん増えて1.9億件以上にもなっています。

でも、不思議なことに死亡保障の総額は減ってきているんです。つまり、みんな保険には入ってるけれど、「保障内容はだんだん小さくなっている」ってこと。

この理由は主に2つ。

  1. 医療や就業不能に特化した小さな保険商品が増えたこと
  2. 定期保険などが“少額で契約しやすい”タイプになっていること

だから「みんな入ってる=安心」ではなく、「中身が自分に合ってるか」をちゃんと見直すことが大事なんですね。

2-5|“いくら足りないか”は「キャッシュフローの見える化」で分かる

私が家計相談をするとき、必ず一緒に描くのが「家計のキャッシュフロー図」です。

これを見える化すると、どの年齢で、いくらお金が足りなくなるのかが一目で分かります。

  • グレー:もらえるお金(遺族年金や保険など)
  • 赤:必要なお金(生活費、教育費など)
  • 緑:自分で準備したお金(貯蓄や投資など)

この図で、「赤がグレーより大きくなるゾーン」を見つけます。そこが、“保険”や“投資”でカバーすべき部分。数字で見えるからこそ、「なんとなく不安」を“ちゃんと対策”に変えられるんです。

第3章|生命保険の本当の役割とは?――「万が一」に備える金額の考え方

3-1|生命保険って、つまり「将来の給料の代わり」

生命保険をものすごくシンプルに言えば、**「自分が働けなくなったときに、給料の代わりを家族に残す仕組み」**です。

たとえば――
年収600万円の方が、あと20年間働くとしたら…

▶ 600万円 × 20年 = 1億2,000万円

これが「将来のあなたの収入(=人的資本)」という考え方です。
もし万が一があって、その1億2,000万円がゼロになってしまうと、家族にとっては大きな痛手ですよね。生命保険は、それを補う“代打選手”みたいなものなんです。

私が相談を受けるときは、この将来の収入額から、すでにある貯金や遺族年金、配偶者の収入などを引いて、

「あといくら補えば安心か?」

という“必要保障額”を一緒に考えていきます。
目安としては、必要額の60~80%を保険でカバー、残りは投資で補うというバランスをおすすめしています。

3-2|保険料って、どうやって決まっているの?

毎月払っている保険料。実は中身は3つのパーツに分かれています。

  1. 純保険料(じゅんほけんりょう):実際に保険金を払うためのお金
  2. 予定利率(よていりりつ):保険会社が将来の支払いに備えて運用するための金利
  3. 付加保険料(ふかほけんりょう):保険会社の経費や人件費などのコスト

最近は、金利(予定利率)が少し上がってきたことで、保険料が下がってきている商品もあります。たとえば、予定利率が0.6%から1%に上がると、保険料が5〜12%くらい安くなることも。

でも、ここで注意したいのが、「予定利率が高いから=お得」とは限らないという点。
パンフレットの“払込総額”をしっかりチェックして、月額ではなく“トータルの支払い”で比較するのがコツです。

3-3|保険の種類、どれが自分に合ってる?

生命保険には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を簡単に整理すると…

保険の種類特徴向いている人
定期保険一定期間だけ保障。掛け捨てで保険料が安い子どもが小さい家庭や、住宅ローン返済中の人
終身保険一生保障が続き、途中で解約すればお金が戻る相続対策や、将来に備えた貯蓄目的の人
収入保障保険月々分割でお金がもらえる形式教育費や生活費を安定的に補いたい家庭

専門的には、それぞれの保険を「IRR(内部収益率)」という視点で比較する方法もありますが、初心者の方は**「何に備えたいのか」=目的に応じて選ぶことが大事**です。

個人的には、定期保険と投資を組み合わせた“シンプル設計”が、家計にとって一番ムダが少なく、管理もしやすいと思っています。

3-4|「平均2,000万円」じゃ足りない!? 実際に必要な保障額は…

生命保険の平均保障額は、だいたい2,000万円前後と言われています。

でも例えば――
年収600万円の夫、専業主婦の妻、0歳の子どもがいる家庭であれば…

教育費や生活費、住まいの費用まで含めて必要になるのは、約5,700万円以上という試算もあります。

「えっ、そんなに差があるの?」

と思われるかもしれませんが、これは家族構成やライフステージで大きく変わるんです。
しかも、子どもが成長して独立すれば教育費が不要になったり、投資が育ってきたりすれば、自分でカバーできる部分も増えていきます。

だから保険は、“一度入ったら終わり”ではなく、3〜5年ごとに見直すことが大切なんです。

3-5|利率アップの“光と影”――安心していい? 見えないリスクもある

最近、「予定利率が上がったから保険料が安くなる」と話題ですが、実はその裏で保険会社がよりリスクの高い運用にチャレンジしている可能性もあります。

つまり、いま想定されている将来の配当金や解約返戻金が、実際には予定より減ってしまうこともありえる、ということ。

「今の保険を解約して、新しく入り直した方がいいのかな?」と悩んだときは、解約にかかる費用や、新しい保険のコストをしっかり比較することが大切です。

私が判断するときは、「数字が9割、気持ちが1割」のバランスで見るようにしています。

3-6|保険と投資の“バランス調整”を定期的に

「じゃあ、結局どれくらい保険を持って、どれくらい投資に回せばいいの?」という疑問に対して、私がよく使う考え方が「スライダー調整」です。

ポイントは3つ:

  1. 毎年、必要保障額を見直す
  2. 投資でお金が増えたら、保険を減らす
  3. 減らした保険料を、そのまま投資にスライドする

このループを繰り返すことで、家計のバランスがどんどん「守りから攻め」へと進化していきます。

第4章|“働けなくなったとき”のお金の備え方 ―― 医療費より怖いのは収入ストップかもしれない

4-1|医療費よりも怖い?本当のリスクは「収入が止まること」

病気やケガに備えて保険を考えるとき、多くの人が「医療費が払えなかったらどうしよう」と心配しますよね。

でも、実はもっと多くの家庭に影響するのは――
**「治療中、働けなくなって収入が止まること」**なんです。

たとえば、会社員が病気やケガで休職すると、「傷病手当金」という制度で給料の3分の2くらいは一定期間もらえます。
けれど、

  • 受け取れるのは最長1年半まで
  • そもそも自営業やフリーランスは対象外
  • ローンや教育費など、固定の支出は減らない

こうなると、毎月の生活費そのものが足りなくなる可能性が出てきます。

4-2|“家計にとっての本当のリスク”とは?──出費ではなく収入の穴

家計の危機というと「急な出費」をイメージしがちですが、実は**「毎月の収入が止まる」ことの方がダメージは大きい**んです。

たとえば、もしあなたが働けなくなったとき――

  • 給料が入らない
  • でも家賃・住宅ローン・保育料・通信費・光熱費はいつも通りかかる
  • 家族の生活費も、当然いつも通り

これが半年、1年…と続くと、医療費の自己負担以上に家計が赤字になります。

医療保険でカバーできるのは、あくまで「治療にかかる費用」。
でも「生活を支えるお金=収入の代わり」は、医療保険では出ないんです。

4-3|就業不能リスクに備える3つの手段

「働けなくなるリスク」に備えるには、次のような3つの方法があります。

✅ ① 緊急予備資金をつくっておく(現金)

  • 生活費の6か月〜1年分を、すぐ引き出せる預金口座にキープ
  • 傷病手当金が出ないフリーランスや自営業の人にはとくに大切

✅ ② 就業不能保険を活用(ミニマムでOK)

  • 働けなくなったときに毎月の収入の代わりとしてお金がもらえる保険
  • 月々の保険料は2,000〜3,000円程度からでも準備可能
  • 長期のものより、最長2年の短期タイプ+貯金の併用がおすすめ

✅ ③ 妻・パートナーの収入源を確認・共有しておく

  • どちらかが働けなくなったとき、もう一方がどれくらい家計を支えられるか?
  • 万が一に備えて、「家計の代打プラン」を夫婦で話し合っておくこともリスク対策のひとつです

4-4|自己点検:うちは大丈夫?“収入が止まったとき”チェックリスト

以下の質問にチェックを入れてみてください。
3つ以上「いいえ」がついたら、何らかの備えを考え始めるタイミングかもしれません。

質問チェック欄
手取り月収の6か月分以上の貯金がある□はい □いいえ
働けなくなっても、1年は家計が回る試算をしたことがある□はい □いいえ
傷病手当金や障害年金について、自分が対象か把握している□はい □いいえ
就業不能保険を検討したことがある(または加入している)□はい □いいえ
夫婦・家族で「収入が止まったときの家計」について話したことがある□はい □いいえ

4-5|投資とのバランスを取るなら「最低限の収入保険+現金クッション」が最強

前の章で「浮いた保険料を投資に回そう」とご紹介しましたが、ここで言う“保険を削る”は“全部やめる”ではありません。

保険で備えるのは、一撃で家計を壊すリスクだけ。
それ以外は、貯金と投資でカバーするのが理想です。

この両方を叶えるのが、ミニマム保障×自動投資という仕組みです。

✔ 「収入が止まっても生活が続けられる」
✔ 「保険にかけすぎず、余ったお金で将来の資産を育てる」

第5章|保険で浮いたお金を「自動でふやす投資」に――未来のお金を見える化しよう

5-1|毎月3万円を自動で投資に回したら、将来いくらになる?

「保険を見直して毎月3万円を節約できた」と仮定してみましょう。
この3万円をそのまま投資に回したら、20年後・30年後にどれくらいのお金になるのでしょうか?

ここでは3つの投資方法でシミュレーションしてみます。
※数字はあくまで目安であり、将来の成果を保証するものではありません。

投資の種類別|将来資産シミュレーション(想定レンジ)

投資の種類特徴【20年後】資産の想定レンジ【30年後】資産の想定レンジ
世界株インデックス積立幅広い企業に分散投資。コツコツ型で長期向け。約900万〜1,200万円約1,600万〜2,200万円
ロボアド自動運用資産配分やリバランスを自動で実行。初心者向けの“おまかせ運用”。約850万〜1,150万円約1,500万〜2,000万円
不動産クラウドファンディング賃料収入や売却益から分配金を受け取れる。年利4〜6%を想定。約1,150万〜1,500万円約2,400万〜3,200万円

📌選び方のヒント

  • 「投資が初めてで不安…」→ ロボアドから始めるのが手軽で安心
  • 「月々ほったらかしで積み立てたい」→ インデックス積立が王道
  • 「定期的に分配金が欲しい」→ 不動産クラファンも検討してみよう

5-2|目的に合わせて“3つの投資の柱”を使い分けよう

それぞれの投資方法には向き不向きがあります。以下のように分けて考えるとわかりやすいです。

✅ インデックス積立

  • 世界中の企業に少しずつ分散投資できるので、長く続けるほど安定しやすい。
  • 「放っておいてもふえる」安心感がほしい人向け。

✅ ロボアド自動運用

  • 投資の知識がなくても、ロボットが自動で運用を調整してくれる。
  • 手数料は少し高めだけど、気軽にはじめられるのが魅力。

✅ 不動産クラウドファンディング

  • 不動産に少額で投資できて、分配金が月1回や半年に1回届く。
  • 「投資してる実感がほしい」「定期的な収入があるとうれしい」という人におすすめ。

5-3|「保険を減らす=リスクを増やす」ではありません

保険を見直して、投資に回すと聞くと、「それってリスクが増えることじゃないの?」と不安になる方も多いかもしれません。

でも、実はそうではありません。保険と投資では「カバーするリスクの種類」が違うんです。

リスクの種類保険でカバーできる投資でカバーできる
突然の死亡や障害定期保険で現金をすぐ確保不可(お金を育てるには時間が必要)
医療費や働けない時の収入減医療保険・就業不能保険・貯金投資は緊急時には不向き
老後資金・インフレ対策終身年金保険など投資で将来の価値を守る

つまり、保険を全部やめる必要はありません。
**「すぐに現金が必要な場面は保険で、それ以外は投資で準備する」**という考え方が、リスクを最小限にして家計のバランスを整えるポイントです。

第6章|なぜ保険ばかり手厚くしてしまうの?――人の“思い込み”が家計バランスを崩す理由

6-1|人は“確率”を正しく感じられない?──行動経済学が教えてくれること

私たちは「数字を見たら冷静に判断できる」と思いがちですが、実際は感情や思い込みで判断をゆがめてしまうことが多いのです。

たとえば、「プロスペクト理論」という行動経済学の理論では、次のような“クセ”があることがわかっています。

  • すごく低い確率(たとえば0.1%)を、実際より高く感じてしまう
  • 逆に、よく起こる損失(5〜10%など)はあまり気にしない傾向がある

このため、多くの人が「めったに起こらないことに備えすぎ(=保険を厚く)」「日常的な資産形成は先送り(=投資を薄く)」という判断をしてしまいやすいのです。

しかも、損したときのショックは、同じだけ得したときの2倍の強さで感じることもわかっています。
こうした“脳のクセ”が、保険と投資のバランスを大きくゆがめてしまう原因なんですね。

6-2|お金を「使い道ごとに分けて考える」ことが、逆に判断をゆがめることも

日常の家計管理では、「これは生活費」「これは旅行用」といったふうに、お金を“使い道ごとに分けて考える”ことが多いですよね。これは**メンタル・アカウンティング(心の家計簿)**と呼ばれる行動パターンです。

このクセが、保険と投資にも影響しています。

  • 保険料 → 「安心のための費用」として扱う → 高くてもOKと思いやすい
  • 投資 → 「増やすためのリスクあるお金」として扱う → 少額でも不安に感じやすい

その結果、毎月3万円の保険料は気にしないのに、1万円の投資が怖く感じるという、ちょっと不思議な現象が起こります。

私が家計相談をするときは、あえて「保険と投資を同じ表に並べて比較」してもらいます。
すると、「えっ、こんなに保険ばかりに偏ってたの…?」と気づかれる方がとても多いんです。

6-3|日本人は世界でもトップクラスの“慎重派”

実は日本人は、世界的に見てもかなり「リスクを避けたがる国民性」があると言われています。

たとえば、家庭の金融資産を見ても、

  • 平均で1,300万円ほど保有しているうち、半分以上が預貯金(=ふやさない選択)
  • 株や投資信託などのリスク資産の割合は、わずか2割以下

また、世界的な調査では、**日本人の8割以上が「自分はリスクを避けるタイプ」**と答えており、これは世界でもトップクラスの慎重派です。

背景にはいくつかの要因があります。

  • 株や投資に慣れていない文化
  • 「周りと同じ」が安心、という日本独自の空気感

これらが組み合わさることで、保険はたくさん入るのに、投資は後回しになるという傾向が強くなるんですね。

6-4|この“心理のクセ”を味方につける3つのコツ

でもご安心ください。
こうした“脳のクセ”をうまく逆手に取って、行動に活かすこともできるんです。

① 自動引き落としで「迷う時間」をなくす

保険料と同じように、毎月決まった日に投資が自動で引き落とされる設定にすると、「やるかどうか」を毎月悩まずに済みます。
つまり、“やらない理由”を作らせない仕組みを先に用意してしまう、という方法です。

② 最初に「下がる可能性」を知っておく

投資を始める前に、「最初の1〜2ヶ月で5%くらい下がることもある」と想定しておくと、実際に下がっても「想定通りだな」と冷静に対応できます。これを**“損失の予行演習”**と呼びます。

③ 少額で“慣れる体験”をしておく

ビットコインやFXなどの値動きが大きい投資商品を、数千円だけ買って毎日眺めてみる――それだけでも、投資の“波の感覚”に慣れることができます。まさに**お金の“筋トレ”**ですね。

6-5|保険と投資の“バランス感覚”を持つためのマイルール

保険をどれくらいにして、投資にいくら回すか――その答えは家庭ごとに違って当然です。
ただ、私が推奨しているのは、次のような**“ハイブリッド型の考え方”**です。

リスクの種類どう備えるか
突然の死亡・重い障害遺族年金や貯蓄で足りない分を、**最小限の保険(ミニマム保険)**で補う
老後資金・インフレ対策少額から始められる自動投資で、長期的に対応
お金に余裕が出てきたらハイリスクな投資(ビットコインやFX)を**“上限5%以内”**で試してみる

つまり、「全部保険」でも「全部投資」でもなく、目的に合わせてバランスよく使い分けることが大切ということです。

第7章|明日から始める!少額自動投資×ミニマム保障のはじめ方ガイド

ここまでで、「保険を見直して浮いたお金を投資に回そう」という考え方をご紹介してきました。
この章ではいよいよ、「じゃあ具体的にどうすればいいの?」というステップを誰でもできる流れでご案内します。

7-1|ステップ1:まずは“必要最小限の保障(ミニマム保険)”を設定

いきなり保険を全部やめるのではなく、「必要な分だけ残す」が基本です。

✅ 保険の目安

  • 死亡保障:万が一のときに家族が困らないよう、必要な金額の6〜8割だけを「定期保険」でカバー
  • 医療保障:入院1日5,000〜10,000円+先進医療特約(オプション)
  • 就業不能保障:病気やケガで働けなくなったときに、月20万円 × 最長2年をカバーできるように

これらをトータルで月1万円以内に収めるのが、コスパのよい設計のひとつです。

7-2|ステップ2:自動積立の設定(所要時間はたったの10分!)

積立投資は、最初の設定さえしてしまえばあとは自動で進みます。やる気も手間もいりません。

設定項目おすすめの設定内容
引き落とし日給料日の翌営業日を指定 → “先取り貯金”になります!
積立金額手取りの10〜15%が目安。少額でもOKです
投資先ファンド世界株インデックス+債券インデックスを半分ずつからスタート
決済方法クレカ積立ならポイント還元で実質リターンUP!

「どこの証券会社を選べばいい?」とよく聞かれますが、実は中身(取り扱い商品)が同じなら大差はありません。
使いやすさやアプリの見やすさで選んでOK。

7-3|ステップ3:iDeCo(イデコ)で節税しながら老後資金もコツコツ

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、将来の自分への貯金をしながら、今の税金も減らせるとてもおトクな制度です。

  • 掛金は全額所得控除 → 手取りが月2〜3%増えるイメージ
  • 受け取り時にも税制の優遇がある → 老後も節税できる

2024年の法改正で、会社員(企業年金あり)のiDeCo上限が月2万円まで拡大されました。

7-4|ステップ4:クレジットカード積立で「ポイントというおまけ」をもらう

最近は、証券口座での積立をクレジットカードで支払えるサービスも増えています。

  • ポイント還元率は**0.5〜1.1%**程度
  • 毎月5万円~10万円までが上限の場合が多い
  • もらったポイントはすぐに投資に回すと複利効果UP!

これって、リスクゼロで利回りが上乗せされるようなものなんです。活用しない手はありません。

7-5|ステップ5:“実験枠”で投資の感覚をつかむ

投資に慣れてきたら、ほんの少額で「価格の上下を体感する練習」をしてみるのもアリです。

  • ビットコインを月5,000円だけ積み立ててみる
  • FX自動売買を“昼ごはん代”くらいで体験してみる

目的は「利益」ではなく、自分の感情と向き合う“心理トレーニング”
損しても生活に響かない範囲で、小さな体験を積むことが大切です。

7-6|ステップ6:半年に1回の見直しが未来を変える

最後に、習慣として定着させてほしいのが**定期的な見直し(リバランス)**です。

  • 半年ごとに資産配分をチェック
  • 投資額が増えてきたら、定期保険の金額を縮小(不要な部分は解約)
  • 浮いた保険料を投資に“スライド”して増やしていく

これを繰り返していくことで、家計の“守り”から“育てる”へシフトしていきます。
保険も投資も、「一度やって終わり」ではなく、「少しずつ調整しながら育てていくもの」と考えてください。

第8章|まとめ&次の一歩 ――「数字で納得」できたら、あとは“仕組み”にまかせよう

ここまで読んでいただきありがとうございます。
もし今、「なるほど。保険も投資も、バランスが大事なんだな」と感じてくださっていたら、次は“実際に動く”ステップに入りましょう。

でも大丈夫。最初だけ少しだけ整えてしまえば、あとは「ほったらかし」でちゃんと回る仕組みができあがります。

8-1|覚えておきたい、3つのカンタン公式

ややこしい理論はさておき、家計の判断に役立つ“3つのシンプルな考え方”を紹介します。これだけ覚えておけばOK!

① 必要な保険金の考え方
 必要保障額 = 将来の収入(人的資本) - 公的保障 - 貯金

② お金の流れの理想形
 保険料 < 投資額(ミニマム保障+自動積立)

③ 半年に1度の見直し習慣
 保険を縮小→ 投資へ回す

この3つをカレンダーやメモに書いて、ふと迷ったときに見返してみてください。
**「とりあえず入ってる保険」「気が向いたら投資」**という、なんとなくのお金の使い方から抜け出すきっかけになります。

8-2|明日からできる“行動リスト”チェック!

「よし、やってみよう!」と思った方のために、やることリストをまとめました。
1つずつでOK。今日から始められる内容です。

時期やること
今日の夜家計簿アプリで、保険料と投資額をチェック
明日給料口座→証券口座への自動振替をネットバンキングで設定
今週末必要保障額を計算し、保険見積もりを3社から取得
翌月10日まで積立設定とクレカ還元申込を完了させる
半年後保険と投資を見直して、余った保険料を投資に回す

「やる気」だけに頼ると三日坊主になりますが、仕組みは裏切りません
最初の30分で設定してしまえば、あとは自動で“気づけば貯まってる”状態がつづきます。

8-3|つまずきやすい落とし穴と、そのリカバリー方法「いい感じに進めてたのに…」と失速しがちなポイントを、先回りで対策しておきましょう。

❌ 「投資がマイナスになって怖くてやめちゃった…」

✅ 紙にこう書いて貼ってください →
「マイナスの月も、コツコツ続けることが正解」

❌ 「保険を解約したけど、返ってくるお金が少なくてガッカリ…」

掛け捨て型の安い保険に切り替えて、浮いたお金を投資で取り返しましょう。

❌ 「ビットコインに夢中になって、インデックス投資を忘れてた…」

✅ ハイリスク投資は**“家計の5%まで”というルールを守る**。
 それ以上使ったら、アラートや自動ストップ設定をしておくと安心です。

8-4|Quiet Money Labから、最後にお伝えしたいこと

数字は冷静で正直です。
でも、その数字をどう「感じるか」「受け止めるか」は、脳のクセや感情に大きく左右されます。

この記事で紹介してきた、

  • 「確率をゆがめて感じる脳のしくみ」
  • 「損を強く恐れる傾向(損失回避)」
  • 「保険と投資を別モノに感じる心の仕切り(メンタルアカウンティング)」

――すべて、“あなたの脳”がやっていることです。

でも、だからこそ必要なのは、

数字で納得する → 仕組みにまかせる → 感情に振り回されない

この3ステップです。

焦らなくて大丈夫。
今日口座を分けて、明日1万円を積み立てて、自動設定をしておけば、
1年後には「ほったらかしで自然に増える」家計が手に入ります。

もし途中で迷うことがあったら、**Quiet Money Labの記事**を見てみてください。
私たちが「数字でわかりやすく解説する」記事を用意しています。あなたの判断のヒントになるはずです。

8-5|ご注意(2025年時点の情報です)

この記事は2025年時点の制度やサービス内容に基づいて書かれています。

  • 投資には元本割れのリスクがあります
  • 利回りや運用実績は、将来を保証するものではありません
  • 制度や商品の仕様は、今後変更される可能性があります
  • プライバシー保護のため、エピソードは一部フィクションを交えています

最後までお読みいただきありがとうございました。
この一歩が、あなたの家計を「安心」と「成長」の両立へと導くきっかけになりますように。
Quiet Money Labは、これからもあなたと一緒に「静かにじっくり育てるお金の知恵」をお届けしていきます。

出典・参考:
厚生労働省保険局|高額療養費制度を利用される皆さまへ
生命保険協会|生命保険の動向
日本年金機構|遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構
生命保険文化センター|2022(令和4)年度 生活保障に関する調査

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この記事を書いた人

運営者:はち(執筆・運営・構成)
会計プロフェッショナル資格保有/簿記上級資格保有/ファイナンス実務経験者

上場企業・IPO準備企業・中小企業に対して、会計処理の確認及び助言・内部統制構築・M&A支援・資金調達支援・買収後の統合支援等を経験。
10社以上の企業に財務面から携わってきた実務家です。

静かな資産形成=数字に惑わされず、自分の判断軸で積み上げていくことを信条に、投資初心者にもやさしく、かつ本質的な記事を執筆しています。

Quiet Money Labでは、不動産クラファン、投資信託、ロボアド、自動売買FXなどの少額投資記事を中心に、数字から投資のリテラシーを育てる内容を構成・執筆しています。

運営者:はな(監修・ライフプラン・保険分野)
ファイナンシャルプランナー資格保有/保険会社勤務

資産設計・保障見直しに携わる現役FP。
保険・NISA・iDeCoなど、資産形成とライフプランに関わる相談業務を行っています。

Quiet Money Labでは、主に積立NISA・ロボアド・保険と資産形成のバランスといったテーマについて、内容の正確性・実用性の監修を担当。

「難しい言葉ではなく、伝わる言葉で安心を届ける」をモットーに、読者にとって等身大の情報提供を意識しています。

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