2025年最新版|社債投資とは?10万円から始める“揺れない収入”のつくり方【初心者向け】

「“投資って、ずっと画面を見ていないといけないんですか?”──そう聞かれることがよくあります。

そんなとき、私がよく紹介する運用法の一つが“社債”です。

社債とは、企業が資金調達のために発行する「借用証書」のようなもので、決められた利息を一定期間受け取ったうえで、満期になれば元本が返ってくるという仕組み。
利息(クーポン)は発行時点で明確に決まっており、配当が変動する株式と違って、収益の予測がしやすいという特徴があります。

さらに、満期まで保有すれば企業の信用が維持される限り価格変動の影響を受けにくいため、「毎日価格チェックをする投資なんて不安で続けられない」という方にとっては、静かに“揺れない収入”を得られる選択肢になり得ます。

とはいえ、「格付け?」「クーポン?」「発行体?」といった専門用語に戸惑い、最初の一歩が踏み出せない方も多い印象です。実際、私が初めて社債の仕組みに触れたときも、「こんな落ち着いた金融商品があるのか」と率直に驚いたことを覚えています。

この記事では、2025年時点の制度(新NISA対応)を踏まえつつ、

  • 社債の仕組みと株式との根本的な違い
  • 格付け・利回り・信用力の見方
  • 少額(10万円単位)から始められるミニ社債の最新例
  • 社債が家計キャッシュフローの“土台”になる理由
  • 投資初心者が注意すべきリスクと途中売却の考え方

などを、数字と構造に強い専門家視点 × 感情に寄り添うFP視点の2つの軸でわかりやすく解説していきます。

「投資=値動きに一喜一憂するもの」だと思っている方にこそ、社債という選択肢を知ってほしい。
そんな想いで、このガイドをまとめました。

目次

第1章 社債と株式の根本的違い──キャピタル vs. インカム

「“社債と株って、どちらも投資じゃないですか?”──そう聞かれると、私は“リターンの構造も、リスクの出方もまったく別物なんです”と答えています。

社債は「貸す」、株式は「出資する」

社債とは、企業が投資家から資金を借り入れるために発行する“借用証書”のような金融商品です。
発行時にあらかじめ利息(クーポン)と償還日が決まっており、原則として満期まで保有すれば、定期的な利息と元本の返済を受けることができます。

一方で株式は、企業に出資することで、その企業の“共同オーナー”の一員になる仕組みです。
企業の利益や将来性が期待される場面では株価が上昇する可能性もありますが、明確な返済義務が存在しない点が社債との決定的な違いです。

破産時に“優先して返してもらえる”のはどちらか?

この立場の違いは、万が一、企業が破産した場合に投資した資金がどう扱われるかに大きく影響します。

破産手続が開始されると、企業の資産は破産管財人の管理下に置かれ、法律に基づいて優先順位の高い順に配当(弁済)が行われます。

  • 社債権者は「一般破産債権者」として扱われ、担保権者や財団債権者、優先的破産債権者に次ぐ順位で、債権の額に応じて弁済を受けることができます
  • 株主はこれらすべての債務が弁済されたあと、会社に財産が余っていた場合にだけ残余財産の配分を受ける権利を持ちます
     しかし、現実には破産時にそこまで財産が残るケースは非常にまれであり、株式の価値は実質的にゼロになることが多いのが実情です。

「“貸す”か“出資する”か──この一語の違いが、破綻時の命運を分けるということは、ぜひ知っておいてほしいと思います。」

キャピタルゲインとインカムゲインの違い

投資によって得られる利益には、大きく2つの種類があります。

リターンの種類内容具体例
キャピタルゲイン資産の値上がりによる利益株を安く買って高く売却した差益、不動産の売却益など
インカムゲイン保有していることで得られる定期的な収益債券の利息、預金利息、株の配当金、家賃収入など

株式は主にキャピタルゲインを狙う投資であり、価格の変動が大きくなる傾向があります。
これに対して社債は、定められた利息が定期的に支払われる構造であり、保有しているだけで収益が見込める「インカム型」の性質が強い資産です。

「値上がりを狙って一喜一憂するより、決まった利息が半年ごとに振り込まれる──そのほうが性に合っている、という方も少なくありません。」

社債は“収入の裏打ち”になる

私が資産設計の相談を受ける中で、社債が特に頼りにされているのはキャッシュフローが不安定な局面です。

たとえばこんな状況です:

  • 育児期など、毎月の支出が一定以上ある世帯
  • フリーランスや自営業など、収入が月によって変動しやすい人
  • 年金以外に生活費を補完する資金源が必要な高齢者

こうした場面では、**「半年ごとに入る確定利息」**が、家計の安定装置として機能します。
それは単に数字の話ではなく、「次に入る金額が見えている」ことが精神的な安心感にもつながるからです。

“増やす”だけが投資じゃない

投資というと、どうしても「増やすこと」に目が向きがちですが、現実の家計ではむしろ「備える」「整える」ための投資の方が重宝される場面は多くあります。

社債はその代表格。大きな値動きはないけれど、確かなインカムが得られる資産として、長期的な家計運用の“地盤”になり得る存在です。

「私自身、“資産運用=派手な成果”だと思い込んでいた時期がありました。でも、本当に安心できるのは“続けられる仕組み”なんですよね。」

第2章 発行体の信用力とクーポン率──“数字の裏側”を読み解く目

信用力とは何か──利回りと裏でつながる「信頼」

社債の利率(クーポン)は、発行する企業の信用力によって大きく左右されます。
信用力が高い企業は、投資家から「返してもらえる」と評価されるため、比較的低い利率でもお金を集めやすい構造になっています。

逆に、信用リスクがある企業は「万一の可能性がある分だけ、報酬(利息)を上乗せする必要がある」と市場に判断され、高いクーポンを提示して投資家に選んでもらう必要が出てきます。

このように、利回りが高ければ高いほど「得」と思われがちですが、実際は「不確実性への補償」である場合が少なくありません。

「利回りは“ご褒美”じゃなくて、“警告灯”として読むことも大切です」

格付けとは──市場が企業を見る“スコア”

こうした信用力を数値的に可視化したものが「信用格付け」です。
格付機関(例:R&I、JCR、Moody’s、S&Pなど)が、企業の財務健全性・事業リスク・資金繰りなどを多面的に評価し、スコアを付けます。

一般に、格付けが高い(例:AAAやAA)ほどデフォルト(債務不履行)のリスクは低いとされ、格付けが低くなるにつれて、投資家が警戒すべき水準は高まります。

ただし、同じ格付けであっても、発行時期や市場環境によって利率が変わることがあり、一律に「AA格なら利率○%」と決まっているわけではありません

利回りに現れない“裏側のリスク”をどう見るか

信用リスクをもう少し具体的に捉えるために使われるのが、「信用スプレッド」という指標です。

これは、たとえば国債のような「信用リスクがほぼゼロ」の債券と、社債などの「リスクがある」債券の利回りの差を示すものです。

信用スプレッドは、以下のような要素から構成されると考えられています:

  • デフォルトリスクプレミアム
     企業が元本や利息を返せなくなる可能性に対して、投資家が求める補償。
  • 流動性プレミアム
     売りたいときに売れない可能性や、市場での取引のしにくさに対する補償。
  • 税制・格下げリスク・市場不安定性なども、信用スプレッドに反映されます。

つまり、表面的な利回りを見るだけではわからない「企業の信頼性に対する市場の見積もり」が、スプレッドという“距離”に現れるというわけです。

「スプレッドが広がっているとき、それは市場が“慎重になっている”というサインでもあります」

“格付け=安心”ではなく、“仕組みを理解する”が第一歩

投資初心者の方が格付けやクーポンを見ると、「どれが正解か教えてください」とよく言われます。
ですが、社債という商品は、一つの“正解”があるわけではありません

  • 同じ格付けでも、発行体によって条件が異なる
  • 市場金利の環境によって、利率が上下する
  • 流通量や人気度、発行タイミングでも差が出る

こうした前提をふまえた上で、「自分にとって、どの構造が安心できるのか」という視点で選ぶことが重要になります。

「数字に強くなる」よりも「数字の意味をつかむ」

社債を選ぶとき、年利や格付けの数値を気にしすぎる方も多く見受けられます。
ですが本質的には、「この利率は、どんな理由でそうなっているのか?」という“構造の解釈”の方がずっと大事です。

「数字を“読む”のではなく、“意味を理解する”こと。
それが、社債という静かな資産と上手につきあうための第一歩だと思います。」

第3章 個人投資家は何から始める?国内社債の買い方最短ルート

「“社債って、そもそもどこで買えるんですか?”と聞かれることがよくあります。

主要ネット証券での購入方法──それぞれの“個性”を理解する

社債は、基本的に証券会社を通じて購入する商品です。
特に新発債(新しく発行される社債)は、証券会社が引受人・売出人となって販売する仕組みであるため、「どの証券会社が取り扱っているか」が、購入可能性を左右します。

▷ SBI証券の取り扱い

SBI証券では、2025年もさまざまな社債を取り扱っています。たとえば:

  • SBIホールディングス 第43回無担保社債(年1.35〜2.35%、4年満期/10万円単位)
  • ソフトバンクグループ 第65回無担保社債(年3.34%、5年満期/100万円単位)
  • その他、過去5年間で600銘柄以上の新発債の取り扱い実績あり

新発債はすぐに完売するケースも多く、タイミングと情報収集がカギです。

▷ 楽天証券の取り扱い

楽天証券でも、新発債を多数取り扱っています。たとえば:

  • 西日本旅客鉄道(JR西日本) 第86回社債(年0.79%、1年/10万円単位)
  • マツダ 第35回無担保社債(年1.86%、7年/10万円単位)
  • JERA債(5年、100万円単位/条件決定予定)

なかには環境対応プロジェクトに充てる「サステナブルボンド」もあり、目的意識のある資金使途が記載されている点が特徴です。

「ミニ社債」で10万円からはじめるという選択

「社債=100万円単位」と思われがちですが、実は10万円単位で購入できる社債もあります。

たとえば、マツダ株式会社が2025年に発行した第35回無担保社債は、10万円単位での販売。
完売済みではあるものの、以下のような特徴があります:

  • 7年満期、年1.86%の固定利率(税引前)
  • サステナビリティ事業の資金調達が目的
  • 申込単位が10万円からと、少額から購入可能

このようなミニ社債は、比較的早期に完売する傾向があるため、タイミングを逃さないことがポイントです。

「“今からでも買えますか?”と聞かれて、“昨日まででした…”と答える場面、あります。」

新NISAで“社債的リターン”を非課税で得るには?

新NISA制度を活用しても、個別の社債を直接NISA口座で購入することはできません

社債の利息は、通常であれば20.315%の税金が源泉徴収されますが、NISA制度において非課税の対象となるのは、一定条件を満たした上場株式や投資信託などに限られます。そのため、社債を直接買って利息を非課税にする、という運用は制度上できない設計です。

ただし、間接的に社債へ投資する方法はあります。

それが、社債を含む債券型の投資信託やETFを新NISA口座内で保有するという選択肢です。成長投資枠(年間240万円)の中で、一定の基準を満たした債券ファンドを選べば、分配金や売却益が非課税で受け取れる形になります。

なお、SBI債やマツダの社債のような10万円単位で購入できる個別社債は、特定口座などの課税口座での取引のみが可能です。これらから得られる利息は、原則どおり源泉徴収の対象となります。

「“税引後でいくら残るか”という視点は、会計でも投資でも変わらない大切な判断軸だと思っています。」

NISAを使って社債的な運用をしたいと考える場合は、投資信託という器を通じて、制度の非課税メリットを享受する。これが現時点での最適解です。

手数料の違いにも注意を

社債を購入するとき、気をつけたいのが手数料構造の違いです。

  • 新発債は、通常は購入対価のみ。手数料がかからないケースがほとんどです。
  • 既発債(市場流通後の社債)は、価格に**実質的な手数料(スプレッド)**が含まれている場合も。
  • 転換社債(CB)については、証券会社によって手数料体系が大きく異なるため、公式サイトでの確認が推奨されます。

銘柄は“固定”ではなく“変動するもの”と捉える

社債は、株のように常に一定の銘柄が売買されているわけではありません。
特に新発債は、取り扱い証券会社が限定されるうえ、申込期間も短い傾向があります。

  • 「どこで買えるか」は日々変わる
  • 「いつでも買える」と思っていると、すぐに完売してしまう
  • 「在庫があるうちに買う」のではなく、「今ある選択肢の中から、自分に合うものを選ぶ」

このような姿勢でのぞむと、無理なく続けられる社債投資になっていきます。

「社債は、地味だけれど“生活と時間に優しい投資”です。焦らず、でも確実に進めたい方にはぴったりの選択肢だと思います。」

第4章 行動経済学で読み解く「利回り追求バイアス」

「“この社債、5%って書いてあるんですけど…お得ですよね?”──そう聞かれたとき、私は“その数字の裏に、どんなリスクがあるか見てみましょう”と答えるようにしています。

「Yield Chasing」──“数字”に引き寄せられる心理構造

投資家が「高利回り」という一点だけに惹かれて商品を選び、背後にあるリスクを十分に確認しない──このような行動は、「Yield Chasing(イールドチェイシング/利回り追求)」と呼ばれています。

2021年の実証研究によれば、ファンドにおいて提示利回りが高い商品ほど、投資家の資金が集中する傾向がありました。
特に「SEC利回り(直近30日間の実質利子収入)」が高いファンドには、翌月の資金流入が明確に増えるというデータも報告されています。

しかし、その一方で示されたのは、「高利回りファンドの実際のリターンは、表示された利回りを実現できていない」という結果も。
高利回りファンドの多くが、より高い金利リスクや信用リスクを抱えていることが背景にあります。

「利回りが高い=得だと直感的に思ってしまうのは自然な感覚です。でもその数字は、リスクの対価かもしれない。そう思って見る習慣が大切です。」

バイアス①:目立つ数字に引き寄せられる「顕著性バイアス」

金融商品の広告や資料では、「年利5%」のような数字が大きく目に入るように設計されています。
この“目立つ”情報が投資判断に過度な影響を与えてしまうのが、「顕著性バイアス(Salience Bias)」です。

人は意思決定の際、目立つ特徴に過剰反応し、他の要素(リスクや流動性、手数料など)を軽視する傾向があります。

複雑な仕組み債や高リスク債であっても、「利回り5%」の表示だけで投資判断を下してしまう。
そんな場面は、日常的に見られる現象です。

バイアス②:比較に必要な情報が足りない「限定合理性」

投資判断には本来、以下のような情報を総合的に見る必要があります

  • 発行体の信用格付け
  • 償還期間や途中売却のリスク
  • 税制上の影響
  • 市場金利との連動性
  • 流動性や手数料の仕組み

しかし、すべてを把握したうえで冷静に比較検討することは、時間的にも知識的にも難しいのが現実です。
結果として、多くの投資家が**「一番分かりやすい数字=利回り」**だけに頼って商品を選ぶ傾向が強まります。

バイアス③:過去の金利が基準になる「参照点依存」

昔は「定期預金で1.5%ついていた」という記憶が、現在の0.3〜0.5%の利回りを“低すぎる”と感じさせる──これが「参照点依存」の作用です。

過去の経験や期待値が“基準点(参照点)”として記憶に残ることで、現状の利回りが「物足りない」と感じられ、本来のリスクを超えてでも高利回り商品を求める動機となります。

プロスペクト理論では、人は“得をする”より“損を回避したい”という感情が強く働くとされます。
「昔よりも利回りが低い=損している」と無意識に感じ、リスクを取る選択をしてしまう心理的構造がここにあります。

“利回り追求”が生むリスク連鎖

利回りだけで社債や債券ファンドを選んだ結果、以下のような連鎖が起こることがあります。

  1. 利回りが高い商品を選ぶ
  2. 格付けが低い企業や複雑な構造の商品をつかむ
  3. 途中償還や流動性の問題に直面する
  4. 元本割れや想定外の損失が発生
  5. 投資をやめてしまい、複利の効果が断ち切られる

「以前、“高利回りに飛びついて損を出してしまった”というご相談を受けたことがあります。その方は、“今は構造を見て判断するようになりました”と話されていて、印象に残っています。」

バイアスを避けるための3つの問い

投資判断をする前に、以下のような問いを自分に投げかけてみてください。

チェック項目確認すべきポイント
その利回りは、信用力と見合っているか?発行体の格付けやデフォルトリスクを確認
その利回り、税引後ではいくら残るか?NISA口座の活用で非課税になるかも含めて検討
途中で売る可能性、本当にゼロか?家計の資金繰りと投資期間の整合性を確認

結論:利回りではなく「構造」を選ぶという視点

利回りの数字を見て判断するのではなく、その利回りがどう生まれているのか、その構造が自分の資産設計と整合しているかを見ること。

「数字は“結果”にすぎません。その数字が生まれる“構造”を読み解く力が、投資家にとって最も大切なスキルだと感じています。」

第5章 ケーススタディ:30代会社員が社債で生活防衛費を賄うまで

「“車検代くらい、給料以外の収入で払えたら少し安心できそうです”──そんなご相談を受けたとき、私は“インカム投資の選択肢”として社債の話をしています。

Aさんのプロフィール──リアルな家計の中の“もうひとつの収入源”

今回ご紹介するのは、都内在住・30代後半の会社員 Aさんのケースです。
以下は、資産設計相談の初回時にお預かりした情報の抜粋です。
※プライバシー保護のため、エピソードは再構成しています。

  • 手取り月収:約25万円
  • 家族構成:配偶者+子ども1人
  • 貯蓄残高:約150万円
  • 投資経験:つみたてNISAを3年間継続中

Aさんの主な相談は、「毎年かかる出費を、少しでも“給料以外の仕組み”でカバーしたい」というものでした。
生活に無理のない範囲で、一定のインカムを得られる選択肢を模索していたことが背景にあります。

資産は“3層構造”で設計──現金・社債・NISAのバランス運用

私が提案したのは、以下のような3層構造による資産設計です。

資産タイプ用途
第1層普通預金(約60万円)医療・災害等の緊急予備資金
第2層社債(10万円×5本)生活防衛費の一部を利息でまかなう
第3層つみたてNISA(年40万円)長期の資産形成・資本成長を目的とする運用

中でも注目すべきは、第2層の社債による“安定インカム”の構築です。

社債の利息が“車検代の一部”を担う仕組み

Aさんは、10万円額面・年利2.0%(税引前)の社債を5本、合計50万円分保有しています。
この構成の場合、年間の受取利息(税引前)は以下の通りです。

年間利息:10万円 × 2.0% × 5本 = 10,000円(税引前)
税引後利息(20.315%課税時):約7,968円

Aさんはこの利息を、自動車税など、年1回程度発生する車関連の支出にあてています。
生活費とは別枠で「この出費は利息でカバーできる」と思えることで、日々の気持ちに少しゆとりが生まれました。

「ボーナスや給与から払っていたときよりも、“利息で払える部分がある”という安心感が違いますね」とAさんは話してくれました。

利息の可視化が“習慣化”を後押しする──家計簿アプリの活用

投資の効果を“見える化”することは、継続のモチベーションにも直結します。
Aさんは、証券口座と連携できる家計簿アプリを導入し、以下のような形で社債運用を可視化しています。

  • 保有資産や残高をリアルタイムで反映
  • 社債の利息入金も、証券口座の明細として自動反映される設計
  • 他の投資(例:つみたてNISA)とのアセットバランスも表示

これにより、「半年ごとに確実に振り込まれる利息」が画面上で“可視化”され、手応えのあるインカム投資として定着していったそうです。

実践者の声:社債は「続ける理由」をくれる

Aさんが実感した、社債の最大のメリットは「リスクを取りすぎずに投資を続けられること」だったといいます。

  • 株式は値下がり時のストレスが大きく、モチベーションが途切れやすい
  • 社債は値動きが小さく、定期的に“収入がある”ことで安心感を得やすい
  • 自分の“守り型”の性格にも合っていた

「利息が振り込まれると、“よし、また半年がんばろう”と思えるんです」──この言葉がとても印象的でした。

“利息のある生活”は、数字以上の安心をくれる

インカム投資は、単に「お金が入る」だけの仕組みではありません。
日常の支出を支える“静かな補助輪”として、心理的にも家計の安定装置になってくれる存在です。

「派手ではないけど、静かに効く」──社債の魅力は、そんなふうに生活に溶け込んでいくものだと改めて感じます。

第6章 途中売却リスクを避ける10のチェックリスト

「“満期まで寝かせる覚悟”、これに尽きると思います。──そう言い切れるかどうかが、社債投資の入り口です。

社債は原則として、満期まで保有する前提で設計された金融商品です。
満期時には額面が償還され、クーポン(利息)も予定通り受け取ることができます。

しかし、何らかの事情で中途売却が必要になった場合、購入時には想定していなかったリスクが顕在化することがあります。
そのリスクをあらかじめ把握し、避けるための「10のチェックポイント」を紹介します。

1. 満期まで使う予定のないお金か?

社債の最大の利点は、安定した利息収入と元本の償還が見込めることにあります。
この安定性は「満期まで保有すること」が前提です。
途中売却する必要がある資金で社債を購入すると、本来得られるはずだったリターンを損なうリスクが高まります。

2. 市場金利の変動による価格リスクを理解しているか?

市場金利と社債価格は「シーソーの関係」にあります。
金利が上がると既発債の価格は下がり、金利が下がれば価格は上がる──これが債券の基本構造です。

例えば、利率2%の社債を購入した後、市場金利が3%に上昇した場合、新発債の方が有利とされ、既発債の市場価格は下落します。
途中売却時には、その差が元本割れという形で現れる可能性があります。

3. 発行体の信用力に変化がないか?

社債の価格は、金利だけでなく「発行体の信用状況」にも左右されます。
企業の業績が悪化すると、市場は「この企業、本当に返せるのか?」と疑い、価格が下がる=リスクが価格に反映されることになります。

定期的な格付けチェックや決算情報の確認は、保有中のリスク監視として必須です。

4. 流動性に乏しい銘柄ではないか?

社債の多くは、「店頭相対取引」で売買されます。
これは、証券取引所ではなく、証券会社との個別交渉によって価格が決まる仕組みです。

  • 買い手が見つからない
  • 気配値のスプレッド(売買価格差)が大きい
  • 市場環境が悪化していると、買い取り拒否や大幅ディスカウントの提示もあり得る

これが、**社債特有の“流動性リスク”**です。

5. 実質的なコストが埋もれていないか?

社債の売却価格には、しばしば**「見えないコスト」**が含まれます。
特に既発債を店頭で売却する場合、手数料無料と記載されていても、買値と売値の差(スプレッド)でコストが発生します。

表面的な価格だけで判断せず、実質的なコストを加味したうえで取引することが重要です。

6. 経過利子の精算ルールを理解しているか?

社債は多くの場合、年2回の利払いがあります。
利払い日の途中で売却した場合、その利息は「経過利子」として日割りで精算され、買い手が売り手に支払います。

  • 購入者:利払日に満額を受け取る代わりに、経過利子分を購入時に支払う
  • 売却者:利払日前でも、保有期間分の利息を経過利子として受け取る

この取り扱いを把握していないと、思ったより受取額が少ないということにもなりかねません。

7. 残存期間が長すぎないか?

債券の価格変動幅は、残存期間が長いほど大きくなります
長期社債ほど、金利や信用力の変化に敏感に反応するため、途中売却リスクも比例して高まるのが実態です。

8. 売却先でスムーズに取引できる体制があるか?

証券会社によっては、「購入はネットで完結、売却は電話注文のみ」というケースもあります。
特に流動性の低い社債や、タイミングによっては売却自体が成立しないこともあり得るため、取引条件の事前確認は不可欠です。

9. 仕組債を誤って選んでいないか?

株価や為替に連動する仕組債(EB債など)は、通常の社債とは異なり、複雑で価格変動も大きく、途中売却時に損失が拡大しやすい構造です。

一部の資料では、参照指標の大幅変動によって70%超の損失が発生するシミュレーションも報告されています。
仕組債であるかどうか、購入前に必ず確認を

10. 家計キャッシュフローの中で“余剰資金”に位置づけられているか?

急な出費(医療・教育・住居など)が発生したとき、現金化を前提としない社債を保有していると困ることがあります
あらかじめ、「このお金は使わない」と割り切れる余剰資金で投資することが、途中売却リスクを遠ざける最大の対策です。

「途中で売らざるを得なかった──そんな後悔を防ぐには、“最初の設計”がすべてです。」
それは、これまで多くの相談事例で繰り返し感じてきたことのひとつです。

第7章 まとめ & 次アクション──社債は“地味だけど効く”インカム戦略

「“もっと早く知っていればよかったです”──社債を取り入れた方の多くが、そんな感想を口にされます。

3行で振り返る社債の本質

  • 社債は「信用力 × 満期 × クーポン」の仕組みで構成される、再現性のあるインカム投資。
  • 発行体の信用格付けと市場金利を押さえれば、想定リスクを“構造で読み解く”ことが可能。
  • 新NISAを活用した債券ファンドの非課税運用や、10万円単位の少額社債の活用で、日常に溶け込む“給与以外の収入”が構築できる。

明日からできる、3つの現実的アクション

✅ 1. ネット証券で社債の取り扱いをチェック

証券会社のウェブサイトにある「債券」カテゴリで、以下のような検索条件を試してみましょう:

  • 「円貨建債券」または「国内債券」
  • 「申込単位:10万円以上・10万円単位」
  • 「新発債」または「既発債」などの分類

SBI証券や楽天証券では、実際に10万円単位から購入できる個人向け社債が多数あります。
まずは目論見書の閲覧から始めてみてください。

✅ 2. 新NISAの“成長投資枠”で債券ファンドを確認

個別の社債は新NISAの対象外ですが、債券ファンドやETFを通じて、間接的に社債に投資することは可能です。

  • 「信託期間が20年以上」「高レバレッジでない」「毎月分配型でない」など、対象要件を満たす必要あり。
  • 投資信託やETFは、少額から社債を含む債券に分散投資できるメリットもあります。

特に「社債+国債」「短期債+長期債」などをバランスよく組み込んだ商品であれば、安定的な収益と非課税メリットを同時に得ることができます。

✅ 3. 家計簿アプリ × 証券口座連携で“インカムの見える化”を始める

せっかく得られる利息収入も、日々の家計に埋もれてしまっては意味がありません。
証券口座と連携可能な家計簿アプリを導入することで、

  • 社債の利息入金履歴が自動反映
  • 保有資産の残高と推移がリアルタイムで可視化
  • 家計の中で“社債が果たしている役割”が実感できるようになる

インカム投資は、“数字で見る安心”を得るための強力なツールです。

「社債って、収益じゃなく“継続の理由”を与えてくれるんですよね」
これは、過去にお話を伺った方の言葉ですが、私自身も強く共感した記憶があります。

社債投資は「静かに続く仕組み」を手に入れること

一攫千金を狙う投資とは対照的に、社債は**“毎月の生活”に静かに寄り添う仕組み**です。
急がず、惑わされず、構造を理解したうえで続けていく──そこに、家計全体の底力がじわりと育っていく感覚があります。

「目立たない。でも、確かに効いている」──
社債のある暮らしとは、そういう“安心の余白”を育てる選択かもしれません。

第8章 FAQ

「“社債って難しそう…”──そう感じたとき、私はまず“よくある疑問を1つずつ確認していきましょう”とお話ししています。

社債投資でよくある6つの疑問(FAQ)

Q1. 社債の利息はいつ支払われるのですか?

A. 多くの社債では、年に2回(半年ごと)支払われるのが一般的です。

日本国内で発行される円建て社債では、「3月/9月」や「6月/12月」など、半年ごとの利払スケジュールが設定されています。
受取方法は証券口座への自動入金で、個別銘柄ごとの利払日は目論見書に記載されています。

Q2. 社債の利息に税金はかかりますか?

A. はい。原則として20.315%の源泉徴収税が適用されます。

内訳は以下の通りです:

  • 所得税 15%
  • 復興特別所得税 0.315%(所得税の2.1%相当)
  • 住民税 5%

通常はこの税金が差し引かれた金額が証券口座に入金され、原則として確定申告は不要です。

Q3. 社債を途中で売ると損をすることがありますか?

A. 市場金利や発行体の信用状況によっては損が発生する可能性があります。

途中売却時の価格は、以下の要因で変動します:

  • 市場金利が購入時より上昇 → 価格下落の可能性
  • 発行体の信用力低下 → 価格下落の可能性
  • 流動性が低い場合 → 実勢価格より安値での買取提示もあり得る

このため、「満期まで保有する前提で余裕資金で投資する」ことが基本とされます。

Q4. 格付けってどう読み解けばいいのですか?

A. 「BBB」格以上が一般的に“投資適格”とされます。

格付けは発行体の信用力を示す評価です。主な分類は以下の通りです:

  • AAA:最上位。債務履行能力が極めて高い
  • AA:非常に高い
  • A:高い
  • BBB:一定の信用力あり。最低限の投資適格とされるライン
  • BB以下:投機的等級(ハイイールド債)であり、リスクは高くなる傾向

格付けは常に一定ではなく、市況や業績によって変動するため、定期的な確認が推奨されます

Q5. 同じ社債でも証券会社によって条件が違うのはなぜですか?

A. 社債は店頭での相対取引で売買されるため、提示価格やスプレッドが証券会社ごとに異なるためです。

特に「既発債」の場合、価格提示は各証券会社が独自に設定し、買値と売値に差(スプレッド)があることが一般的です。
このスプレッドが実質的な手数料のような役割を果たしており、流動性が低い銘柄ではその差が大きくなる傾向があります。

Q6. 利回りが高い社債はお得なのですか?

A. 必ずしもそうとは限りません。

高利回りには以下のような理由がある可能性があります:

  • 発行体の信用リスクが高い
  • 市場金利上昇の影響で価格が下落している
  • 残存期間が長く、変動リスクを内包している

利回りの高さだけで判断するのではなく、格付け・市場金利・流動性・満期までの計画など、構造全体を見る視点が重要です。

投資に関するリスクと制度に関する表示

  • 社債投資には、元本割れリスク・途中売却時の損失・発行体の信用リスクが伴います。
  • 表示されている利回りは、将来の実現リターンを保証するものではありません。
  • 本記事は、2025年5月時点の制度に基づいて作成されています。将来的な法改正や税制変更により適用条件が変わる可能性があります。
  • 体験談・ケーススタディはプライバシー保護のために再構成されています。

「“難しいかも”と思ったら、それはまだ“知らないだけ”かもしれません──社債は、知れば知るほど静かに頼れる存在です。」

出典:
国税庁|No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)|国税庁
楽天証券|マツダ株式会社第35回無担保社債(新発債)| 楽天証券
マツダ|MAZDA NEWSROOMマツダ、個人向け社債「MAZDA SUSTAINABLE BOND」による資金調達を決定|ニュースリリース
日本証券業協会|「個人向け社債等の店頭気配情報について
東京証券取引所|企業価値向上経営セミナー
法務省|法務省:破産法等の見直しに関する要綱

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

運営者:はち(執筆・運営・構成)
会計プロフェッショナル資格保有/簿記上級資格保有/ファイナンス実務経験者

上場企業・IPO準備企業・中小企業に対して、会計処理の確認及び助言・内部統制構築・M&A支援・資金調達支援・買収後の統合支援等を経験。
10社以上の企業に財務面から携わってきた実務家です。

静かな資産形成=数字に惑わされず、自分の判断軸で積み上げていくことを信条に、投資初心者にもやさしく、かつ本質的な記事を執筆しています。

Quiet Money Labでは、不動産クラファン、投資信託、ロボアド、自動売買FXなどの少額投資記事を中心に、数字から投資のリテラシーを育てる内容を構成・執筆しています。

運営者:はな(監修・ライフプラン・保険分野)
ファイナンシャルプランナー資格保有/保険会社勤務

資産設計・保障見直しに携わる現役FP。
保険・NISA・iDeCoなど、資産形成とライフプランに関わる相談業務を行っています。

Quiet Money Labでは、主に積立NISA・ロボアド・保険と資産形成のバランスといったテーマについて、内容の正確性・実用性の監修を担当。

「難しい言葉ではなく、伝わる言葉で安心を届ける」をモットーに、読者にとって等身大の情報提供を意識しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次