【2025年版】債券ETFとは?メリット・リスク・買い方まで完全ガイド

「債券って、あまり動かないんですよね?」
──そう相談を受けたとき、私はまずスマートフォンを取り出し、先月末に届いた「分配金通知メール」を画面に映します。

たとえば2025年5月。
日本の10年国債利回りは月初の1.3%台からじわじわと上昇し、下旬には一時1.52%に達しました。米国では、10年債利回りが4.3〜4.5%台の範囲で変動し、月末時点で4.397%。ほんの数年前まで「債券=退屈」と思われていた頃からは、にわかに信じがたい光景です。

特に注目すべきは、「安全資産」であるはずの債券に、明確なボラティリティ(価格変動性)が戻ってきているという点です。米国債市場のリスク指標「MOVE指数」も、2023年にはリーマンショック以来の高水準を記録。日本の債券市場でも、利回りの急変動を嫌った投資家が一時的に入札を見送る動きが観測されました。

にもかかわらず、私は淡々と債券ETFを保有し続けています。なぜなら、評価額が揺れても──
「毎月振り込まれる安定した分配金」が、確かに生活の中で機能しているからです。

本記事では、そうした「配当の手触り」に加え、

  • なぜ今、債券ETFのリスクが再評価されているのか
  • メリットとデメリットをどう整理すればよいのか
  • 初心者でも迷わず始められる購入ステップ
    を、すべて2025年時点の実データに基づき、数字と仕組みで解きほぐしていきます

「定期預金よりマシだろう」と思って手に取った債券ETFが、気づけば“自分の家計に別の柱を立てる存在”になっていた──。
そんな投資家の一歩目を後押しするガイドとなるよう、静かに、しかし確かな情報だけでお届けします。

目次

第1章|時代背景:2025年の金利転換点──「安全資産」さえボラティリティを帯びる理由

「債券って、値動きがないから安全なんですよね?」
──そう尋ねられたとき、私はまず直近の金利チャートを開きます。そこには、従来の「債券=安定」というイメージを覆す数字が並んでいます。

2025年5月、日本の10年国債利回りは一時1.52%に達し、月末時点では1.500%で取引を終えました。一方、米国の10年国債利回りも4.3〜4.5%台の高水準で変動し、5月30日の終値は4.397%
これは、たった1〜2年で1%近く金利が動いたことを意味します。金利に敏感な債券ETFを保有する投資家にとって、これは“設計変更レベル”のインパクトです。

1-1. “ゼロ金利神話”の終焉

2023年11月以降、日本の金利はじわじわと上昇を始めました。
日本銀行は、2023年7月にYCC(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化を発表し、事実上10年金利の上限を1.0%に引き上げ。さらに2025年1月には基準貸付利率を0.75%に引き上げ、マイナス金利政策の段階的な終了を明確にしました。

その結果、2024年5月に10年債利回りは1%を突破し、2025年5月には一時1.52%まで到達。このわずか1年半のあいだに、長期金利は約1%上昇するという異例の動きを見せました。

一方、米国の金利環境も高止まりが続いています。2025年5月30日の米10年債利回りは4.397%。5月中は4.3〜4.5%台で上下し、1日の変動幅が10ベーシスポイント(0.10%)を超える場面も珍しくありません。

「債券=値動きが少ない」という時代は、すでに過去のものになりつつあります。

1-2. 上昇圧力の三重奏──政策・需給・インフレ

金利の上昇を押し上げているのは、ひとつの要因ではありません。政策・需給・インフレという3つの圧力が同時に作用しています。

  • 政策要因
    日本銀行は2025年1月の金融政策決定会合で、補完貸付制度の基準金利を**0.75%**に引き上げました。これは実質的な利上げであり、市場金利全体に上昇圧力を与える転換点となりました。
  • 需給要因
    財務省は、2025年5月に超長期債(30年・40年)の発行抑制を検討していると報道されました。投資家の買い控えが想定以上に強まり、30年債利回りが一時3%近辺まで跳ね上がる局面も確認されています。
  • インフレ要因
    IMFの予測によれば、2025年の先進国のCPI(消費者物価指数)は2.5〜3.0%台で高止まりする見通しです。
    インフレが高水準で続く限り、債券投資家は「実質利回りの確保」に神経を尖らせざるを得ません。

この3つの力が交錯する中で、金利の予測はますます困難になり、ボラティリティは“構造的”に高まっています。

1-3. イールドカーブの“ねじれ”が示すシグナル

「イールドカーブ(利回り曲線)」を見ると、短期金利と長期金利の関係から、金利政策と市場の見方のズレが浮かび上がります。

  • 日本の利回り構造(2025年5月30日時点)
    • 2年債:0.750%
    • 10年債:1.500%
      →緩やかな「スティープ化」が進行中(正常な右肩上がりの曲線)
  • 米国の利回り構造(同時期)
    • 2年債:一時4.052%
    • 10年債:4.397%
      →短期の引き締めは継続しつつも、長期には“粘着性のあるインフレ”を織り込んだ順イールドが形成されつつあります。

このようなカーブの変化は、金融政策の先読みと市場心理のぶつかり合いを如実に表しています。

1-4. 債券ETF投資家にとっての意味

「1%の金利変動で、ETFの評価額が数%動くこともありますよ」
──そう伝えると驚かれることが多いのですが、これは債券ETFにおける“日常”です。

債券ETFは、株式のように価格が常に動きます。特に長期債ETFは**デュレーション(残存期間)**が長いため、金利の変動に敏感に反応します。

だからこそ、「評価額が下がった」と焦るよりも、月ごとに着実に振り込まれる分配金という“現金フロー”に意識を向けることが重要です。
短期債ETFと長期債ETFをどう組み合わせるか──それはもう、“退屈な選択肢”ではなく、リスクとリターンの舵を自分で取る戦略なのです。

第2章|ETFという器:投資信託とどこが違う?──「買ってから」の動きが変わる構造の話

「ETFって、投資信託と何が違うんですか?」
──そう尋ねられたとき、私はいつもキッチンの話をします。

たとえば、シチューを作ったあとに保存するとき、鍋のまま冷蔵庫に入れる人もいれば、耐熱パウチで小分けにしておく人もいます。
中身は同じでも、器の違いが“管理のしやすさ”を変える。投資信託とETFの違いも、まさにそこにあります。

2-1. 基本構造──中身は同じでも「出入り口」が違う

債券ETFと投資信託は、運用対象が同じインデックスであることも多く、中身の資産構成は類似しています。
ですが、取引の仕組みはまったく異なります。

投資信託の仕組み

  • 一日に一度だけ決まる「基準価額(NAV)」で売買
  • 購入・解約は、証券会社や銀行などの販売会社を通じて注文
  • 約定は翌営業日、それから数日後に受渡完了というプロセス

ETF(上場投資信託)の仕組み

  • 株式と同じように証券取引所でリアルタイムに売買可能
  • 価格は市場の需給で動き、NAVとの乖離は裁定取引によって調整される
  • 投資家は市場で売買するのみで、運用会社との直接やり取りは不要

つまり、投資信託が「1日1回しか開かない鍋」だとすれば、ETFは「小分けで好きなときに取り出せるパウチ」です。

2-2. ETFだけが持つギミック──「創造」と「償還」のメカニズム

ETFの価格がNAVと大きく乖離しにくいのは、**指定参加者(Authorized Participant: AP)**が存在するからです。

  • 創造(Creation)
    指定参加者が債券インデックス構成銘柄をバスケットとして差し入れ、それに見合うETFが新たに発行されます。
  • 償還(Redemption)
    逆にETFを返却すると、APは中身の債券バスケットを受け取ることができます。

このメカニズムにより、ETFの市場価格がNAVと乖離しても、裁定取引が働くことで価格が自動的に修正される仕組みになっています。

私自身、板が薄い時間帯に「無理に飛びつかない」ことをこの構造から学びました。焦らず指値で待つ。ETFはそれを可能にしてくれます。

2-3. コスト構造──経費率と売買コストの“二層構造”

ETFと投資信託は、保有中にも、売買時にも、それぞれ異なるコストが発生します。

コスト項目投資信託ETF
信託報酬(運用管理費用)例:国内債券型で0.11〜0.13%、先進国債券型で0.06〜0.15%程度(インデックス型の場合)0.06〜0.14%前後が一般的(例:iシェアーズ)
売買手数料ノーロード型は無料/ロード型は1%~3%程度約定10万円時で0〜100円程度(ネット証券)
実質コスト申込・解約に手数料が残る場合ありBid/Ask スプレッドが実質コスト(統計値は確認不可)

特にETFは、保有コストとして経費率が極めて低水準(0.1%前後)である点が特徴です。
一方で、取引時のスプレッドやタイミング
により実質コストが変動するため、「板が厚い時間帯に、指値で発注する」ことが基本戦略になります。

2-4. 流動性──“出口の広さ”はETFの強み

ETFは取引所に上場しているため、出来高があればいつでも売買可能です。特に流動性の高いETFではスプレッドも狭く、指値も通りやすくなります。

投資信託は、換金できるのは1日1回。基準価額も約定日まではわかりません。
そのため、相場が急変するときは、投資家全員が一つの出口に殺到するような状況になり、解約遅延や価格乖離が発生しやすくなります。

ETFなら、出口は市場そのもの。スピード感と柔軟性がまったく違います。

2-5. 税務と分配──投資後の「税金のかかり方」を整理しておく

ETFと投資信託のどちらを選んでも、分配金には原則20.315%(所得税+住民税)の源泉徴収課税がかかります。これは、上場・非上場にかかわらず、国内課税ルール上の共通点です。

  • 分配金:課税区分は申告分離課税または源泉分離課税(いずれも20.315%)
  • 売却益(キャピタルゲイン):売却時に発生し、ETF・投資信託ともに同様の課税が行われます

なお、NISA口座で保有している場合、分配金・譲渡益ともに日本国内では非課税となります(外国税の源泉徴収を除く)。

ETF・投資信託のいずれを選ぶ場合でも、購入後は「いつ・どの収益に・どのくらい課税されるか」を把握しておくことが、長期的な資産管理の前提になります。

2-6. どんな人に、どちらが向いているか

投資スタイル向いている器理由
毎月の積立で放置したい投資信託自動積立サービスが充実。リバランスも委託できる
売買タイミングを自分でコントロールしたいETF指値発注・リアルタイム取引・コスト調整が可能
配当を生活費に充てたいETF月次・隔月の分配型が多く、現金フローが明確
NISAで非課税運用したい両方可非課税枠内では経費率や利便性が選定基準に

締めのひと言──「鍋にフタ」か「パウチで小分け」か

ETFは、構造そのものが「使いやすく、合理的」に設計されています。
鍋のフタを開けるような手間をかけず、パウチのように必要な分だけを、必要なときに取り出す。
この違いを知るだけで、あなたの投資行動は確実に変わります。

第3章|債券ETFの4大メリット──数字と仕組みで“静かに育てる資産”を持つ

「債権ETFってどうですか?」──
そう尋ねられたとき、私はまず、コスト・分散・価格・配当という4つの数字を口座画面に並べて見せます。

そこには、過剰な派手さはないけれど、再現性の高い“仕組み型資産運用”の全貌が詰まっている。
本章では、2025年5月時点で確認できる事実だけをもとに、債券ETFを選ぶ4つの理由を淡々と整理していきます。

3-1. 経費率が圧倒的に低い──0.03%で運用できる商品もある

債券ETFの大きな特徴は、運用コストの低さです。代表的なETFでは、以下のような数値が実際に確認されています。

  • バンガード・トータル債券市場ETF(BND):経費率0.03%
  • バンガード社の債券ETF群の平均経費率は0.05%

このように、年0.1%未満で運用できるETFが実在します。
アクティブ型の投資信託では0.5~1.0%の運用報酬も珍しくない中、長期保有ほど差が効いてくる設計です。

3-2. 自動で分散が効く──1本で数百本以上の債券を保有

ETFは、1本の商品を買うだけで、数百〜数千の債券に分散投資される仕組みになっています。

例えば:

  • iShares Japan Govt Bond ETF(JGB1X):
    • 保有銘柄数:278本(2025年5月末時点)
    • 純資産総額:約480億円

このETFを1口買うだけで、国内の複数年限の国債に分散投資したことになる設計です。

個別債券では難しい分散が、ETFでは商品選定ひとつで自動化されます。

3-3. 少額で始められる──1口1,000円台の商品も存在

「まとまった資金がないと始められないのでは?」という声をよく聞きますが、実際には数千円から購入できる債券ETFも存在します。

例として:

銘柄名最低購入価格補足
JGB1X(日本国債ETF)約940円1口単位で買付可能
NEXT FUNDS 国内債券ETF(2510)8,708円(10口単位)呼値単位改定後

このように、ネット証券を使えば1万円以下で債券分散投資をスタート可能な環境が整備されています。

3-4. 分配金が得られる──月次・四半期の現金フローが見える

債券ETFは、保有しているだけで定期的に分配金(配当)を受け取れる商品が多く、キャッシュフローの視認性が高い点もメリットです

これにより、たとえ評価額が下がる局面でも、「今月も分配金が入った」という実感のある収益が心理的安定感につながるという声も多く聞かれます。

締めのひと言:「少額・分散・配当・低コスト」が一つに詰まった投資商品

債券ETFは、

  • 低コスト(年0.03〜0.05%)
  • 自動分散(数百本単位の債券組入れ)
  • 数千円台からの参入
  • 分配金による定期的な現金収入

という、**資産形成の基本機能を1本で兼ね備えた“仕組み商品”**です。

第4章|債券ETFの4大デメリット──「数字で守る投資」だからこそ見落とさない4つのリスク

「債券ETFって、やっぱり株より安全ですよね?」
──そう聞かれたとき、私はこう答えます。「確かに、仕組みは合理的です。でも、“安全”とは、“リスクがない”という意味ではありません。」

本章では、実際のデータに基づく4つの具体的なリスクと、それにどう向き合うべきかを冷静に整理します。
債券ETFを長く味方につけるためには、「安心設計の裏側にある数字の揺らぎ」も数字で受け止めることが大前提です。

4-1|価格は想像以上に動く──「債券=安定」とは限らない

債券=値動きが少ないという印象を持たれがちですが、ETFという市場で取引される形になると、価格は日々変動します
特に金利上昇局面では、想定以上の値下がりを経験することもあります。

事実に基づく数値:

  • バンガード・トータル債券市場ETF(BND)の過去5年の最大ドローダウンは−18.58%
  • 同じく5年間の標準偏差(ボラティリティ)は6.15%

この数字は、短期的に大きなマイナスが発生し得ることを示しています。
「価格がほとんど動かない」という前提で保有してしまうと、下落時の心理的ダメージは大きくなります。

4-2|インデックスと“ズレる”ことがある──トラッキングエラーは構造的に発生する

債券ETFは、ベンチマークとなる債券インデックスに連動するよう設計されています。
しかし、実際のパフォーマンスが完全に一致することはありません。これが「トラッキングエラー」です。

トラッキングエラーの具体的数値例:

  • 経費率による乖離:年率約0.22%〜0.69%(ETFの信託報酬によって異なる)

トラッキングエラーの原因:

  • 経費率(信託報酬など)
  • インデックスの完全複製が難しい場合の「サンプリング」
  • 債券のリバランスや売買タイミングの差
  • 配当再投資のタイムラグ
  • 保有債券の流動性
  • 規制による保有比率の上限(米SECなど)

つまり、「指数に連動している」といっても、ぴったり同じにはならないのが現実です。

4-3|為替の影響は避けられない──米ドル建てETFは円高・円安で評価額が変わる

米国籍の債券ETFを日本円で保有する場合、為替レートの変動が評価額に直接影響します

2025年4月時点の為替ボラティリティ情報:

  • USD/JPYの1か月インプライド・ボラティリティは13%を超える水準に上昇

具体的な影響の例:

  • 円高(1ドル=150円→140円)になると、ドル建て資産の円換算評価額は下がる
  • **円安(1ドル=150円→160円)**になると、評価額が上昇する

為替リスクを抑えたい方には、**「円建ての債券ETF」や「為替ヘッジ付き商品」**を選ぶという選択肢もあります。

4-4|税務上の見落とし──NISAでも米国課税は還付されない

債券ETFの配当金には、国内外でそれぞれ異なる課税がかかります。

税区分税率NISAでの扱い
日本の税(所得税+住民税)20.315%NISAなら非課税
米国の源泉徴収税(米国籍ETF)10%NISAでも控除不可(非還付)

なぜNISAで還付されないのか?

NISA口座では、日本の税金が非課税になるため、控除の“引き当て”となる国内課税が存在しないことが理由です。
したがって、米国で源泉徴収された10%はそのまま引かれ、戻ってきません

還付を受けたい場合は:

  • 特定口座(源泉なし)または一般口座で保有し、確定申告で外国税額控除を申請する必要があります。

締めのひと言|「守る設計」の裏にある“数字の揺れ”も理解しておく

債券ETFは、低コスト・分散・少額投資・分配金など、長期運用に向いた設計が魅力です。
だからこそ、その裏にある4つの見えにくい数字リスクを知っておくことが、安心して続けるための前提です。

リスク項目内容
価格変動金利変動で−18%超の下落が起きた事例あり
トラッキングエラー経費率や運用方法の違いで指数とのズレが年0.2〜0.7%程度生じうる
為替リスク為替変動によって円建て評価額が上下。円建て商品やヘッジ付も検討対象
税務リスク米国課税分はNISAでも戻らず、確定申告をしないと還付不可

第5章|債券ETFの買い方 実録5ステップ──最初の1口まで迷わないために

「債券ETFって、一度買えばほったらかしでもいいんですよね?」
──そう話しながらも、初めて購入する際には誰もが緊張しています。実際、相談を受ける中で最も多いのは、「最初の1口を買うまでの流れがわからない」という声です。

この章では、初心者が迷わず進める5ステップを紹介します。

ステップ1|証券口座を開設する

債券ETFの購入には証券口座が必須です。最近は、スマホだけで本人確認が完結する「オンライン口座開設」が主流です。

  • 楽天証券:スマホで本人確認すれば最短2営業日で取引開始
  • SBI証券:オンライン申込なら1〜3営業日で開設完了
  • マネックス証券:翌営業日に口座開設できるケースもあり

オンライン申込では、運転免許証やマイナンバーカードによる本人確認+マイナンバーの提出が必要です。
これは「犯罪収益移転防止法」と「マイナンバー法」に基づく義務であり、税務・法定調書提出に必要なステップとして定められています。

ステップ2|ティッカーを検索し、銘柄を確認する

ETFにはすべて「ティッカーコード(銘柄略称)」があり、これが検索の入口になります。

  • 国内ETF:東京証券取引所のETF一覧ページから銘柄コードを確認
  • 海外ETF:ネット証券の検索窓で「BND」「TLT」などのコードを入力

銘柄を選ぶ際には、必ず以下のような基本情報を確認します:

  • 経費率(Expense Ratio)
  • 保有銘柄数と債券の種類
  • デュレーション(残存期間感応度)
  • 分配金スケジュール(月次・四半期など)

ステップ3|板(オーダーブック)を確認して流動性を測る

ETFの注文前には、「板情報」=現在の買い・売り注文の状況を必ずチェックします。

  • 歩み値/気配欄で、Bid(買い注文)とAsk(売り注文)の厚みを確認
  • **スプレッド(買値と売値の差)**が0.02〜0.10%以内ならおおむね良好
  • 薄い板(売買が少ない)ETFでは、指値で時間をかけて約定を待つのが安全

また、NAV(基準価額)と市場価格の乖離を示す「インディカティブNAV(iNAV)」が提示されていれば、リアルタイム価格の割高感も確認可能です。

ステップ4|指値注文で「買う価格」を自分で決める

ETFの注文には、主に「指値」と「成行」の2種類があります。

  • 指値注文:○○円以下で買いたい、という具体的な価格を自分で指定
  • 成行注文:価格を指定せず、すぐに約定させる方法

なぜ指値か?

成行注文は、板が薄いETFでは価格が跳ねやすく、想定外の高値で約定するリスクがあります。
専門家としては、以下のような注文が推奨です

  • 「板が5本」並んでいる銘柄を選ぶ
  • 買い指値は「最良買い気配+1ティック下」に置く

こうすることで、無駄なコストを避けて、落ち着いて買いにいけるのです。

ステップ5|保有後のチェックポイントを定期確認する

ETFは“買って終わり”ではありません。保有後のフォローアップも重要です。

チェック項目内容推奨頻度
分配金予定権利落ち日・支払日月1回
経費率改定運用会社からの告知半年ごと
iNAVと市場価格乖離が大きくないか週1回
資産構成株式とのバランス調整四半期ごと
税務書類年間取引報告書、配当通知書など年1回(確定申告前)

補足:ポイント投資との併用

楽天証券では、楽天ポイントで国内株式や米国ETFの一部を購入可能です。
新NISA(成長投資枠)でも利用でき、実質的に“0円からの投資”も可能になります。

注意点として、NISAで得られた配当には日本の課税はかかりませんが、外国(例:米国)の源泉税(10%)は控除されない点に留意が必要です。
この二重課税調整は確定申告が前提であり、NISA口座内では還付されません。

締めのひと言

ETFの価格は毎日動きます。
けれど、**分配金が予定どおり振り込まれ、コストが予定どおり収まっていれば、それは“静かに働く資産”**です。

この5ステップを踏めば、最初の1口はもう怖くありません。
次章では、「やりがちな落とし穴とその回避策」について、チェックリスト形式で具体的に掘り下げていきます

第6章|やりがちな落とし穴と回避策──仕組みで守る投資こそ「入り口」が肝心

「信託報酬が0.05%の債券ETFなら、もう安心ですよね?」
──そう相談を受けたとき、私は必ずこう答えます。
「数字が良くても、“入り口”を間違えると、静かに損が積み上がることもあるんです。」

本章では、債券ETFを初めて購入・保有する際に多くの個人投資家がつまずきやすい3つの典型パターンを整理し、具体的な回避策とあわせてご紹介します。

6-1|スプレッドで損する──「成行注文 × 寄り付き」は危ない

ETFの価格は、常に「買値(Bid)」と「売値(Ask)」の板によって成り立っています。
この差がスプレッドです。

取引量の少ない銘柄では、このスプレッドが0.10%以上に広がることもあり、何も考えずに成行注文を出すと、思っていたより高い価格で約定してしまうケースがあります。

特に注意すべき時間帯は、市場の寄り付き直後と引け前。この時間は板が薄く、価格も安定しづらいため、一時的にスプレッドが拡大しやすいのです。

✅ 回避のコツ

  • 取引は10:00〜15:00(東京)など、板が厚い時間帯に限定
  • 成行注文ではなく、必ず「指値注文」を使う
  • 指値は「最良気配+1ティック」あたりを基準に調整

スプレッドは「目に見えない手数料」とも言えます。たとえ信託報酬が0.03%でも、買い方ひとつで0.10%以上コストが上乗せされることもある──この落とし穴には要注意です。

6-2|配当落ちで焦る──「含み損」は演出にすぎない

債券ETFは、多くが毎月や四半期に分配金を支払う設計になっています。
そのタイミングで起きるのが、いわゆる**「配当落ち」**です。

分配金の支払日(権利落ち日)の翌営業日、ETFの価格は分配金相当額だけ帳簿上で調整されて下落します。
つまり、何も起きていないのに評価損が出たように見える瞬間があるのです。

慣れていないと、これを「価格が急落した」と誤解してしまい、不要な売却や動揺につながることがあります。

✅ 回避のコツ

  • 分配スケジュールは事前に確認しておく
  • 評価損益ではなく「トータルリターン(価格+配当)」で見る習慣をつける
  • 再投資型の口座を利用すれば、自動でNAV回復を待てる仕組みにもできる

配当落ちの下落は「帳簿の調整」であって、実質的にはあなたのお金は減っていません。この理解があるだけで、運用の安定感は格段に増します。

6-3|経費率の見落とし──「コスト0.2%」でも高すぎることがある

債券ETFの運用コスト(信託報酬)は一見すると小さな数字ですが、年0.1%の差が長期でリターンを大きく削ることもあります。

たとえば、平均的なインデックス債券ETFの経費率は0.05〜0.20%程度とされる中、0.30%超のETFを選んでしまうと、それだけでリターンが15%以上削られる計算になることもあります(年利3%運用時、10年で試算)。

さらに、純資産が少ないETFは運用効率が悪くなり、後から経費率が引き上げられるリスクもある点に注意が必要です。

✅ 回避のコツ

  • 必ず「経費率(Expense Ratio)」を確認
  • 同じ指数を追う複数ETFがある場合、経費率が最も低いものを優先
  • 純資産総額が1億ドル未満など、規模が小さいETFは警戒して選ぶ

ETFの魅力は「コスト効率」。そこを見落としてしまうと、せっかくの制度設計が台無しになる可能性があります。

落とし穴チェックリスト(まとめ)

リスク項目よくあるミス回避のための基本行動
スプレッド板が薄い時間帯に成行で約定板が厚い時間帯に指値で発注
配当落ち評価損と勘違いして焦って売却トータルリターンで判断する習慣
経費率表面上の数字だけで高コストETFを選ぶ必ず比較・最安のETFを選ぶ

締めのひと言──「仕組み投資」は、“入り方”を間違えなければ報われる

債券ETFは、仕組みで守り、数字で積み上げる投資です。
だからこそ、その仕組みに慣れないうちは、入り口でつまずきやすいポイントがいくつかあるのも事実。

でも安心してください。これらの落とし穴は、すべて事前に数字と操作で回避可能なものばかりです。

第7章|楽天ポイント・Vポイントで“ほぼノーコスト参入”する裏ワザ

――「現金ゼロ」でも投資デビューできる時代へ

「手元に現金はない。でも楽天ポイントなら3,000ptある」──
そんな一言から、債券ETFデビューが一気に現実味を帯びることがあります。

本章では、**楽天ポイント・Vポイント(旧Tポイント)**を活用して、ほぼ現金ゼロで債券ETFを購入する具体的なステップを解説します。

7-1. 楽天ポイントで米国債ETFも買える──最大50万pt/日まで対応

楽天証券では、通常の楽天ポイントを1ポイント=1円として以下の商品に利用できます:

  • 国内株式(現物)/NISA口座での取引
  • 米国株式(円貨決済)【債券ETF含む】
  • 投資信託の買付・積立

利用条件

  • 1日最大50万ポイントまで利用可能
  • ポイントコースを「楽天ポイントコース」に設定することが必須
  • ポイント利用設定は「すべて使う/毎日上限/毎月上限」から選択可

SPU(スーパーポイントアップ)連携の注意点

  • 投資信託または米国株式に対し、月3万円以上のポイント投資で+0.5倍達成
  • ただし、国内株式へのポイント投資はSPU対象外

実際の購入手順(制度準拠)

  1. 楽天証券マイページで「楽天ポイントコース」を選択
  2. 「取引設定>ポイント利用設定」で利用額を入力
  3. 米国株注文画面で「ポイント利用額」を指定(残額は自動的に現金で補完)

7-2. Vポイントで日本国債ETFも購入可──SBI証券の共通ポイント戦略

2024年4月にTポイントとVポイントが統合され、「青と黄色のVポイント」として再始動しました。SBI証券ではこのVポイントを活用して、国内ETFの購入が可能です。

対象商品

  • 国内株式(ETF含む、単元未満株対応)
  • 投資信託(積立・金額指定)
  • 一部ロボアド投資サービス

利用条件

  • 1ポイント=1円で利用可
  • NISA口座(成長・つみたて)でも利用可能

実際の設定手順

  1. 「ポイント設定」画面でメインポイントをVポイントに切替
  2. 連携ID(旧Tカード番号またはVポイントアプリID)を登録
  3. 注文画面で「ポイント利用」を指定して発注

7-3. ポイント+現金のハイブリッド投資も可能

ポイントは買付代金の一部として利用でき、残額は証券口座の現金で自動充当されます。

実例:

  • 楽天ポイント3,000pt+現金7,000円 → 米国長期債ETF(TLT)1口(約10,000円)
  • Vポイント1,500pt+現金1,200円 → 東証上場日本国債ETF(JGB1Xなど)1口(約2,700円)

いずれも、購入処理・受渡・税制上の扱いは現金購入と同一です。

7-4. 税務・制度上の留意点──“ノーコスト”ではあっても非課税とは限らない

内容実務上の扱い
ポイントの税務処理ポイントは「値引き扱い」。買付簿価は現金+ポイントの合計額で記録
NISA口座での扱いポイントで買ったETFの配当・譲渡益は非課税(国内税)
米国ETFの外国税米国10%源泉税はNISA口座では還付不可(控除対象外)

「非課税=全額戻る」というイメージはNISAでは一部例外もあるため、ポイント使用時の配当課税には要注意です。

締めのひと言──「ポイントだけでETF買えますか?」という質問に、私はこう答えます

「はい。買えます。しかも、それで投資を“始めてしまう”ことが一番大事です。」

私自身、最初に債券ETFを買ったのは、楽天ポイント4,100ptだけでした。
金額にすれば4,100円。でも「現金を使っていない」という感覚が、心理的ハードルを驚くほど下げてくれたのを覚えています。

🔸注釈

本記事は2025年時点の情報をもとに執筆されています。制度や市場状況、企業の業績等は将来にわたって変動する可能性があります。
また、PER・PBR・その他財務指標は企業の過去または予想値をもとに算出されるものであり、将来の株価や利益を保証するものではありません

投資には元本割れのリスクが伴います。
利回り・配当・企業の成長性は、あくまで将来の見通しであり、確定的な成果を約束するものではありません。

出典・参考:
国税庁|No.12007-2 Foreign tax credit for non-residents|National Tax Agency JAPAN
日本銀行|金融市場調節方針の変更について : 日本銀行 Bank of Japan
日本経済新聞|30、40年債利回りが過去最高 日銀への期待後退 – 日本経済新聞
ロイター|〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、米債高や入札無風で買い 長期金利1.5%に低下 | ロイター

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この記事を書いた人

運営者:はち(執筆・運営・構成)
会計プロフェッショナル資格保有/簿記上級資格保有/ファイナンス実務経験者

上場企業・IPO準備企業・中小企業に対して、会計処理の確認及び助言・内部統制構築・M&A支援・資金調達支援・買収後の統合支援等を経験。
10社以上の企業に財務面から携わってきた実務家です。

静かな資産形成=数字に惑わされず、自分の判断軸で積み上げていくことを信条に、投資初心者にもやさしく、かつ本質的な記事を執筆しています。

Quiet Money Labでは、不動産クラファン、投資信託、ロボアド、自動売買FXなどの少額投資記事を中心に、数字から投資のリテラシーを育てる内容を構成・執筆しています。

運営者:はな(監修・ライフプラン・保険分野)
ファイナンシャルプランナー資格保有/保険会社勤務

資産設計・保障見直しに携わる現役FP。
保険・NISA・iDeCoなど、資産形成とライフプランに関わる相談業務を行っています。

Quiet Money Labでは、主に積立NISA・ロボアド・保険と資産形成のバランスといったテーマについて、内容の正確性・実用性の監修を担当。

「難しい言葉ではなく、伝わる言葉で安心を届ける」をモットーに、読者にとって等身大の情報提供を意識しています。

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